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ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今のヨダセアSeaYodaのレビュー・感想・評価

4.1
「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズ満を持しての最終章では、レネー・ゼルウィガーが再び不器用で愛すべき主人公を見事に体現。彼女を取り巻く豪華キャスト陣—ヒュー・グラント、コリン・ファース、ジム・ブロードベント、エマ・トンプソンらが勢揃いし、さらに新たな息吹として、重厚な存在感を放つキウェテル・イジョフォーと「ホワイト・ロータス」で一躍注目を集めたレオ・ウッドールが加わることで、このシリーズに相応しい華やかな終幕を飾っている。

これまでブリジットは恋に悩み、理想のパートナーを求め続けてきたが、本作ではその人生航路が大きく転換する。彼女はすでに結婚し、二人の子どもを授かったものの、夫との突然の死別によってシングルマザーとして奮闘する姿が描かれる。かつての恋に悩む女性から、人生の苦難を経験した大人の女性へと成長した彼女の姿は、単なるコメディヒロインの域を超えた深みを物語に与えている。

人生の新たなステージに立ったブリジットの葛藤と幸福の再定義を描くことで、従来の「ラブコメ」というジャンルの枠を軽々と超え、より普遍的で深みのあるヒューマンドラマへと昇華した今作。もちろん、シリーズの真骨頂である予測不能なドタバタ劇や時に大胆過ぎる笑いの要素も健在で、観る者を飽きさせない。

中年期を迎えたブリジットを通して、映画は年齢に関わらず湧き上がる新たな挑戦への渇望や、恋愛、自己表現への憧れを鮮やかに描き出す。一方で、親としての責任や社会的な期待から「自分のことより子どものことを」という自己犠牲のプレッシャーや固定観念との葛藤も繊細に表現されている。今話題の『サブスタンス』と共通するテーマとして、加齢による外見の変化と自信喪失という現実も赤裸々に映し出される。

これらの中年期特有の危機感を丁寧に描きながらも、本作は年齢を問わない挑戦の価値、いくつになっても色褪せない恋の輝き、そして人生という旅路を味わい尽くすことの豊かさを雄弁に語りかける。その普遍的なメッセージは、年齢や性別を超えて、すべての観客の心に響く深い余韻を残すだろう。

メガホンを取ったのは『To Leslie トゥ・レスリー』で“完璧ではいられない女性”の内面と葛藤を等身大に描き出したマイケル・モリス監督。その洗練された演出スタイルと人物描写の才能が本作でも遺憾なく発揮され、ブリジットの喜怒哀楽がスクリーンから溢れ出る。

細部へのこだわりも印象的。衣装デザインや小道具の選択、キャラクターの仕草や台詞回しの一つ一つに、シリーズ初期作品、特に記念碑的な第1作へのリスペクトとオマージュが散りばめられている。長年このシリーズを追いかけてきたファンにとっては宝探しのように楽しめる要素が随所に配置されており、ブリジットの旅路の締めくくりに相応しい愛情と敬意に満ちた作品に仕上がった。

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