凹T木人

セプテンバー5の凹T木人のネタバレレビュー・内容・結末

セプテンバー5(2024年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ミュンヘン五輪での「黒い九月」事件を、世界で初めてテロを生中継したスポーツクルーの視点で描く伝記映画。
明け方に発生したイスラエル選手を含む人質立てこもりテロ。生放送のハンドラーに据えられたメイソンと、そのクルー。世界への中継は選手村にも届き、頼りないドイツ地元警察の動きがテロリストらに筒抜けるも、あわや最悪を回避、犯人たちは近場の空港にヘリで向かい国外逃亡を計る。通訳のマリアン含むチームが空港まで追うが既に夜で現場までは良く見えない。「人質は開放された」という噂が流れ、それを報道し世界が安堵した少し後、恐ろしくも悲しい「人質の全員死亡」という情報が、ホストのジムからテレビを通じて9億人に伝えられた。


報道のお仕事映画だった。。。
犠牲者とその家族への追悼と、報道関係者への賞賛が感じられて良かった。
アラブ系や、世代として迫害に無関係なドイツ人への偏見に対しても、作中で牽制されててとても良かった。

スピルバーグの『ミュンヘン』を遥か昔にみたけれど、あれは室内でめっちゃ人殺されてなかった?と不思議に思ってた。
どうやらあちらはその後の報復作戦までを描いていたらしい。
画面が暗すぎて何がなにやら、と、世界史にも疎い私は全く理解出来なかったことを思い出した。


これからひと仕事するぞ、の現場責任者と休み中に掻き集められたチームが対応に当たったのがせめてもの救い?
これ、カメラ指示するキーマンが疲労困憊だったらこんな切迫感出なかったかも、と思ったけど、きっとそこはフィクションなのかな。

「解放された」という誤情報は、報道のルールである2つ以上のソース確認をせずに報道されてしまったけれど、ただ「情報によると」と付け加えたし、あそこで踏みとどまってもすぐ後に電報?報道官からの正式アナウンス?が入り結果的には変わらなかっただろう、という誰の責にもしないのも良い。
(信頼の情報源すら発出した内容だった、という、こちらも責任分散)(アナウンスが生放送を受けたものだった可能性は考えたくない)

既に歴史である出来事をありありと描くことで、「今の報道の姿勢は正しいのか」「軍備は」「オリンピックは」と人々に考えさせる作品。
作る意義のある作品だなと思った。本当に素晴らしい。重みのある映画でした。
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