なかなかドキドキした。
最近『ホテル・ムンバイ』も観たこともあって、その流れでこれも気になってきた。
思ってた以上にジリジリした。
テロリストの人質事件の現場ではないけど、少し距離がある中でそれを“生中継”することによるテレビ局としての倫理と速報性の狭間で起きるヒリヒリした現場の空気が伝わってきた。
臨場感と切迫感溢れる“マスメディアの現場”のリアル。
1972年のミュンヘンオリンピックで実際に起きたパレスチナのテロリスト達によるイスラエル選手団の人質事件。
ミュンヘンにオリンピックの中継のためにやってきたアメリカの放送局ABCがその顛末までを報じる物語。
この中継のクルー達のチームは、いわゆる“スポーツ班”で、本来の“報道局”とは異なるチーム。
だがしかし、アメリカの本拠地にいる本職の“報道局”に任せるよりも、現場にいる我々こそがこの事件のリアルを“生”で届けられると奔走する。
だけども、この緊急中の緊急案件を報道に不慣れなチームが、限られた人数と資材と時間で対応していく。
結果的にマスメディアの歴史の中でテロリストの犯行を初めて“生放送”で放送した事件。
人質を取ったテロリストの犯行を“生放送”することの意義、価値。
一方で、“生”であるが故に何が起きても映ってしまうという放送倫理感や、報道することで捜査や交渉の邪魔をしてしまうのではないかというリスク。
これらに挟まれながら、でも、目の前で起きるスポーツの祭典の渦中で起きる衝撃的な事件と自分たちの役割を考えながら、向き合あって視聴者に真実を伝えようとするチームの悪戦苦闘。
重厚で、骨太だし、事実として衝撃な結果を招くこの一連の出来事がとても興味深く観れた。
報道として、超えていきたい領域と、超えてはいけない領域というか。
この通訳役の女性、どこかで、、、と思ったら『ありふれた教室』のレオニーベネシュだった。
この人、今回もとても良かった、真に迫りながら、でも人間らしさもあって。
完全なTVの人間でもないから客観的でもあって。
通訳として彼女が訳して出てくる言葉1つ1つの重みもあって、彼女の存在意義がとてもこの作品に意味を持たせていた。
最前にいてもなかなか掴めない実態もあることにイライラが募ったり。
何を優先すべきかと考えていればすぐに次のことが起きたり、情報があちこちから湧き出て錯綜したり。
楽しく熱気に包まれるはずのスポーツの祭典オリンピックが、凄惨で血も涙もないテロリズムの事件へと変貌してしまう現場の空気感にこちらも包まれるような作品。
事実だから何を言っても仕方がないのだけど、この顛末はなかなかやるせない。
このテロリズムに対して、現場やマスメディアに何ができるのか、できないのか、ということを深々と問うてくるような重みのある衝撃作。
※24年3月、映画オススメブログ、始めました。
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