なお

セプテンバー5のなおのレビュー・感想・評価

セプテンバー5(2024年製作の映画)
3.4
緊迫感あふれる予告映像に惹かれ鑑賞。
1972年ドイツで開催されたミュンヘンオリンピックで発生したテロ事件・通称「黒い九月事件」を題材にしたドラマ映画。

テロ事件など報道したことがないスポーツ番組担当のクルーたちが直面する苦悩と奮闘を描く。

✏️報道の価値
平和の祭典・オリンピックで起きてしまったテロ事件。
「オリンピックのテロ事件」と聞くと、1996年に開かれたアトランタオリンピックのテロ事件の方を真っ先に思い浮かべてしまうんだけど、それより20年以上前にも1度テロ事件があったんですね。

この未曽有のテロ事件を報道したのは、血生臭い戦争や暴力とはおよそ無縁のスポーツ番組担当のテレビマンたち。

通常なら「いやこれ自分たちの管轄外なんで」と尻尾を巻いて逃げ出すような局面だけど、むしろ「今これを世界に報道できるのは自分たちしかいない」と矢面に立ち、事件現場を細部に渡って、文字通り世界に届けようとする。

テロ事件の報道の仕方なんて当然分からないスポーツ番組のクルーたちはてんやわんや。
手探りながらも、現場組と司令部に分かれ「今、そこで起こっている真実」を報道していく姿は、事件当時さながらの緊迫感たっぷり。

数日に渡って報道を続ける中で、クルーたちは手ごたえと同時にこのような感情を胸に抱く。

「本当にこれを世界に放送していいのか」

事実、このテロは事件のほぼ最初から最後まで実況中継が成された。
あまりに細部をテレビ放送したことにより、秘密裏に進められていたはずの警察の突入作戦もテロ組織に看破されてしまう。
ともすれば、生中継の途中に人質が銃弾で頭を貫かれ死に絶える様子が、全世界の人びとの視界に入ってしまうかもしれない。

そんなクルーたちの葛藤や苦悩が滲むような、胸を締め付けられるかのようなシーンの連続が本作最大の見どころ。

本作は「黒い九月事件」をどこまでも真摯に描いたドキュメンタリー的作品だなぁ、と思った。
極端にドラマチックだったり、大仰な劇伴を使ったりは極力控え、あくまでこの事件を報道したテレビクルーたちの人間ドラマや、心の動きを描くことに重きを置いている。

自分はどちらかというと「もうちょいドラマチックな演出があっても…」と思ってしまったので、暗めの画面につられ若干ウトウトしてしまった時間帯も。
(なので、ランチ後一発目の鑑賞にはオススメしない)

かつ、せめてWikipedia等で「黒い九月事件」の概要くらいは予習しておいた方が楽しめたかなぁ。
普段映画のネタバレは絶対踏まないように気をつける派だけど、実際の事件を元にした映画作品に限っては多少の予習があった方が楽しめるかも。
そんなことを思ったりもした。

☑️まとめ
この「黒い九月事件」、かの巨匠スピルバーグ監督も『ミュンヘン』というタイトルでちょうど20年前に映画を1本作ってるんですねぇ、知らなかった。
機会があればぜひ見てみたいですね。

2021年に開かれた東京オリンピックでもテロ対策が話題になった。
幸いなことにテロ騒ぎは1件も起きなかったと記憶しているけど、今やたくさんの外国人観光客や移民を受け入れようとしている日本。
いつテロに関連するニュースが流れてもおかしくはない。

もし私たちが住む街でテロ事件が起こったら。
その時の報道や、情報の取捨選択の在り方は──。
この映画で描かれた「黒い九月事件」は決して"過去の出来事"ではない。

<作品スコア>
😂笑 い:★★★☆☆
😲驚 き:★★★★☆
🥲感 動:★★★☆☆
📖物 語:★★★★☆
🏃‍♂️テンポ:★★★☆☆

🎬2025年鑑賞数:12(10)
※カッコ内は劇場鑑賞数
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