萩原くわがた

ドラキュラ血のしたたりの萩原くわがたのレビュー・感想・評価

ドラキュラ血のしたたり(1971年製作の映画)
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自分の『クラシックイギリスホラー映画大好き!』という補正抜きでもかなり面白いと思った作品。
正義を掲げる清教徒達が罪のない若い女性を捕らえて魔女狩りを執行するシーンから始まって、うわ嫌な時代だ…とオープニングからハラハラする。世の中が混乱して皆が正常で無い時代。ホラーとしてこれ以上無いロケーション。

行きすぎた正義を掲げて暴走する清教徒と、悪魔崇拝に明け暮れついに己も人間を辞めた伯爵の青年、そしてその2つの勢力の間には2人の無垢で美しい双子の少女。
嫌な予感がしつつも構図もすごいワクワクする。歪んだ正義と歪んだ悪が全部をめちゃめちゃにしながら、十字架と牙が飛び交う血みどろのバトルを展開。

イギリスのゴシックホラーの例に漏れず大道具やセットが最高。油絵のように異国的でクラシック的な魅力にあふれており、画面の細部まで目を凝らせば凝らすほど楽しい。

そして清教徒の厳格なおじさん役のピーターカッシングの演技が良い。「本当は善のおじさんなんだろうな、でも時代と環境のせいで怒りと悲しみの戦士みたいになってしまったんだろうな、でも本当は自分の行いが行きすぎていることに薄々気づいて葛藤してるんだろうな…」みたいなところまで想像してしまう深い表情がずっと見れる。
美しい主人公の少女2人(本当にすごい美しい)、邪悪でキザな伯爵と登場人物が皆見てて楽しい人たちばかりなんだけどカッシングは飛び抜けて固唾を飲んで見守ってしまう。

音楽が結構攻めてるのも印象的。70年代なので古臭い映画だと思いきや、古いというより「この時代尖ってんなあ!」と思わせられる瞬間が多かったり。またゴア要素も割とあってホラームービー的満足ボーナス加点がポロポロと出てくる。

邦題が嘘で吸血鬼は出てこれどドラキュラ伯爵は出てこないんだけど、全然満足感は予想を上回ってきてくれる。84分の映画だけど始まりから終わりまでかなり美味しい身が詰まってる映画。