ルサチマ

とおぼえのルサチマのレビュー・感想・評価

とおぼえ(2022年製作の映画)
4.3
1回目 イメフォ映画祭2023
2回目 東京藝術大学20周年記念上映

色々文句はあれど、過去に藝大で作られた修了制作では瀬田なつきの『彼方からの手紙』と並んでベストかな。

美点はとにかく小器用にまとめるのを拒みつつ気合いで押し通すパッションを感じさせてくれる点で、不満があるのは結局のところ人物の意志が見出せないまま内面の世界でとどまるところと冒頭を象徴的なイメージで逃げてしまって、本筋の語りから入らないで迷路のように仕向けてるところ。
単純なものを複雑に見せすぎるものより、単純さを突き詰めたときに、有無を言わさぬ真理に辿り着けるはずで、それは自分にとっても大きな課題なのだが、『とおぼえ』は本来もっと単純でいいはず。もっとストレートに本題を語るべきところを持ち前の画面の審美性によって本質を見えづらくさせて、観客を悪い意味で翻弄させてやしないか。
単純さの中に個人の関心を詰め込めきれるかどうか。それはまた困難だが、きっと両立できるはず。
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