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異邦人の1234のネタバレレビュー・内容・結末

異邦人(1967年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「太陽のせいです」

これ、絶体絶命のピンチの時とか辛くなった時に自分を奮い立たせる時とか大変な事態に巻き込まれた時に使えそう!(?)用法①浮気の言い訳②宿題を忘れた時の言い訳③遅刻の言い訳④こうなったのは全部太陽のせいなんだと思い込むことによって前向きになるetc...

アルベール・カミュの「異邦人」を映画化。原作を読んだことがなかったので、まさかここで「こうなったのは全部暑さのせいです!」とか言い出すんじゃないだろうな…と思っていたら本当に言ったからびっくりした(笑)。この「太陽」とは、「世間一般的な理論」というような「一つしかない」或いは「多くの人が信じて疑わないこと」を象徴しているように思われた。
ここでいう「不条理」とは「明晰な考えを持って世の中と対峙した時に生じる不合理性」を指している。野心を失い、無気力であるように見える主人公は、実は誰よりも強い信望を持った人間であるように思えた。

折り合いが悪かった母親の死。棺桶を前に、顔を見るよう促されるが、主人公は黙って首を横に振る。

男「どうでもいいんです」
老人「解りますよ」

「今日、ママンが死んだ」。この物語は死で始まり、死で終わる。「究極の不条理」とは、どう足掻いても訪れる「死」の宿命性。

神を信じない男が死刑執行前の独房の中で、神と対峙し、自らの人生を振り返った時、初めて母親と向き合うことが出来た。宿命的に訪れた死を前に、彼は世の中を容認することが出来たのだ。
「母親の死を悲しまない」主人公は「悪」なのか。一側面からその人を判断することは出来ないのだと思った。人が人を裁くことの難しさと、そもそも「罪」とは一体何なのか。人は何処から来て何処に行くのか。神はいるのか、いないのか。そういった実存主義的なテーマを掲げている。最終的に主人公は、「今居る世界ではない何処か(来世)」があることを認めることで救われた。それは新しい人生への渇望であると同時に、現実社会への諦めでもあった。主人公演じるマルチェロ・マストロヤンニの「何を考えてるのか分からない」演技が冴えている。
彼女と一緒にいる時あまり楽しそうに見えなかったのと、私にはこの女性が鬱陶しく思えて「あゝだから“結婚”を頼んでもいないのにチラつかせてくる女って嫌がられるんだね!」と納得。
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