ベルリン国際映画祭にて。

今年のオープニング作品。変な映画だったな…と思いつつ見た後からジワジワくるやつだった。

ストーリーはブルジョワ家族の崩壊を描いたやや深刻な話なのに、全裸ラース・アイディンガーは登場するわ(←ちゃんと意味あり)、突然ミュージカル調になるわ、セラピーやスピリチュアルな要素は出るわで。終わってみればコメディ色やや強めだったかな。
トム・ティクヴァ監督の映像センスはバッチリ堪能できる。

ある機能不全の家族が家政婦を亡くし新たにやってきた家政婦が不思議な力を持つシリアからの難民だった…というだけで1本の映画になりそうだけど、この家族の個性がキョーレツ。
中でもラース・アイディンガーが演じる父ティムは意識が高いのはいいが、どんなに悪天候でも自転車通勤、家では全裸、オフィスでは裸足…とやりすぎ&行き過ぎな環境意識か変に突き抜けたナルシストなのか。
しかも、ミュージカル調になるので歌ったりキレッキレダンスを披露したりしてツボる。

家族の問題とスビリチュアルな能力を持つ家政婦、さらにその家政婦の過去が絡んでくる。
語ること多すぎない？と思うくらい。なので尺も長い(約2時間40分)

会社での仕事が第一の夫、政府の支援を得てのケニアでの劇場建設に取り組む妻、VRゲームにはまり込む17歳の息子、ナイトクラブでの快楽に酔う双子の娘といった個人中心のバラバラの家庭に、奇妙な能力を持つシリア難民の新しい家政婦が入ってくることで起こる様子を、別の男との妻の小さな子供も絡めて描く映画。

面白かった。空想シーンやミュージカル・シーンがあったり、アニメーションが出てきたり、ストーリーも複雑でごちゃ混ぜ感が強いが、個人的にはこんな映画は好き。

めちゃくちゃおもろい、とめちゃくちゃつまらんが交互にくる。興味ない大作ドラマの短縮版を観てるくらいの雑感。もうこの世の全部を詰め込もうとしてる感じがあって、それがごくたまに、ある一点に集中される形で(クローズアップや手持ちカメラというどこかアナログな形で、あるいは夢物語として)一瞬だけ現れたりもするが、単純に見応えというものが欠けていて、体感4時間の果てに来るオチすら悪い意味で到底まともではないのでいくら誠意を見せつけられたところでもうなんでもよくなる。この監督まだランローラランしか観てないけどあれしか愛せない気がする。途中までヴィクトリアのセバスチャンシッパーと混同していて、ああ、ヴィクトリアっぽい、とか嬉しくなっていたがただの気のせい。つまらんと言って嫌いになれる映画ではなく、むしろどちらかというと肩入れしたい気分だが、今これを観たところで思うことが特にないのでこのくらいの星。