伊達巻さんの映画レビュー・感想・評価

伊達巻

伊達巻

シビル・ウォー アメリカ最後の日(2024年製作の映画)

4.8

この狂気を当たり前のような静けさで撮るアレックスガーランドはやっぱり凄い。反戦映画としての機能もあるんだけどそれと同じか、むしろそれ以上に「撮る」行為についての映画でもある。無数のカメラが蔓延る時代に>>続きを読む

ナイスガイズ!(2016年製作の映画)

3.0

期待してたけど微妙。なんでそこそうなっちゃうの、なんでここでそうするの、という小さなイライラがゴズリング演じるホランドの天性の情け無さによって愉快に回収されていくが、これといった爽快感があるわけでもな>>続きを読む

セックスの向こう側 AV男優という生き方(2012年製作の映画)

4.5

「いろんなセックスがあっていいと思うんですよ」「心を通わせるツールだとかいうけどセックスって。人間ってそんな綺麗なもんか?と思うんですよね」。
AVを見てるだけじゃわからない男優たちの知的な感じが伝わ
>>続きを読む

ショーン・オブ・ザ・デッド(2004年製作の映画)

5.0

夜、庭で友達とふたりで黙って観てたら母親に「気配がうるさい」と言われてしぶしぶラスト30分を残したままノートパソコンを閉じたあの日から早3年が経ち、いつか一緒に観終えようという暗黙の約束を遂にドイツ、>>続きを読む

ウィキッド ふたりの魔女(2024年製作の映画)

4.5

おわぁああああエルファバかっこいいなにこれ😭グリンダも超かわいい😭舞台もめちゃくちゃ綺麗なんだけどそれ以上にエルファバとグリンダの魅力が凄すぎてもはやふたりだけで映画全体を支配している。すごい。ダンス>>続きを読む

ラブ・アクチュアリー(2003年製作の映画)

1.0

どんなに反感を抱いてもクリスマスの奇跡を信じさせてくれる変な映画だと割と肯定的に捉えていたところで冗談みたいなラストを真っ正面からくらってしまって立ち直れないくらいボコボコにされた気分 ダメージがデカ>>続きを読む

ミスター・ノーバディ(2009年製作の映画)

1.5

ただただつまらん。延々と同じことを繰り返すだけで、本編の中においてすら目新しさのかけらもない。昨日たまたま観た動画でサカナ山口くんが言ってた「技術なんてどうでもいい」の説得力が増す。選択を委ねられた少>>続きを読む

モアナと伝説の海(2016年製作の映画)

3.8

自然が大好き。「外に行ってはならない」に対する「それでも行きたい」という分かりきったアンサー。海が私を呼んでいる。海が私を選んだ以上に、私が海を選んだのだ。だからモアナを守る形ない海の生命も、まるでモ>>続きを読む

情婦(1957年製作の映画)

5.0

面白すぎる。面白すぎて画面に顔面が食い込みそうだった。だらっとして可笑しな前半からスイッチの入った法廷弁護士さながら勢いの増す中盤を経て急降下し続ける後半、そしてラストに至るまで映画の喜びが詰まりに詰>>続きを読む

耳をすませば(1995年製作の映画)

5.0

しんだ、大好き。小学生の頃から何十万回と口ずさんできたあの歌でこんなに爆泣きすることになるなんて。ここまで歩いてきた自分と小さなところから大きなところまで無限に重なってしまってどうしようもなかった。ず>>続きを読む

雨月物語(1953年製作の映画)

5.0

原作ほぼ未読。久々の溝口。有名すぎてなかなか手が出なかったというかここぞというときに温めまくっていたのだが画面も時間も隅々までめちゃくちゃに凄すぎでもう断然ワンオブザベスト溝口。画と音で白米三杯は余裕>>続きを読む

17歳のカルテ(1999年製作の映画)

4.1

TSと続けて観たのは良い直感だったし、関連して考えさせられるものがあった。綺麗にまとめられた終盤まで好きになれるかというところだけれど、もちろん嫌いにはなれない。でもなんかこういう、とある場所から主人>>続きを読む

トレインスポッティング(1996年製作の映画)

5.0

高校生の時に初めて観て食らった以来だから6、7年ぶり。細かいとこまでびっくりするくらいよく覚えてた。死ぬまで何度でも繰り返して観たいし、観るたびに好きになる脆さとぶ厚さ。オールタイムベスト

恋愛睡眠のすすめ(2006年製作の映画)

3.0

テーマ以外に好きになれる要素がない。台詞も好きじゃない。シャルロットゲンズブールは相変わらず大好きだけど、映画の誠実さよりギリおふざけが勝ってしまっているように思えてしまってノれない、少なくとも見えて>>続きを読む

ジュリア(s)(2022年製作の映画)

3.3

途中まで★5なんだけど後半から★1をあげるのもめんどくさいラストに至るまで見事に失速していくのでギリ間をとってこの星数…。中盤のつまらなさも然るべき数ページと考えればまだこの映画を愛せるという自信があ>>続きを読む

くもりときどきミートボール(2009年製作の映画)

5.0

激アツ。際限の効かなくなった本編さながら映画自らのバロメーターまでぶっ飛んだかのようにクライマックスが更新され続けるという無茶苦茶な豪快っぷり。「ありのままであれ」というなんら変哲のない分かりきった導>>続きを読む

市民ケーン(1941年製作の映画)

4.0

なんだかんだ初めて最後まで観た。総じてつまんないっちゃつまんないけど流石に要所での見応えは凄まじくて最初のちょっとしたトリック含め完璧なカメラワークにも感嘆する。台詞を噛んで「酒が回ってきたな」と言う>>続きを読む

Snowbird(原題)(2016年製作の映画)

4.0

アビーリーカーショウの生活に飽きたみたいなアンニュイな仕草が好き。野菜とか切るの遅そうで良い。暑くても寒そうな肩も変わらず怒りのデスロードのときのそれ。小手先みたいでもちゃんと粘度があってそこはさすが>>続きを読む

Khaite FW21(原題)(2021年製作の映画)

3.8

ショーンベイカーのズームインかなり美味しい。誰でも撮れそうな感じで魅入るものは特にないけどこれ撮る人がAnora撮るのは必然というかほんとにやりたかったことなんだろうなと思って嬉しくなった、ここに通じ>>続きを読む

タロットカード殺人事件(2006年製作の映画)

2.1

ウディワーストってほどでもないけどビビるくらいつまらんしいつにも増して要らん台詞も多い。でも最後の最後でちょっと好きになっちゃったのでおまけの星。「左車線に慣れてないから」からの会話は楽しくて最高。た>>続きを読む

ANORA アノーラ(2024年製作の映画)

5.0

今年ベスト。もう誰がなんと言おうとこの映画を死ぬ気で愛したい。若さは永遠で、永遠じゃない。限界なんて知らないでアホがアホのまま突き進んでいく無敵の疾走にクソほど泣いてしまった。138分の尺をしっかりと>>続きを読む

美姉妹 犯す(1981年製作の映画)

4.2

ありきたりかもしれんけど正直めちゃ良い。一年くらい前に好きなAV何?って聞いてきた友達が自分から「やられる側がだんだん気持ちよくなってくるレイプもの」って話し始めて一女の人の意見としても興味深く聞いて>>続きを読む

現代娼婦考 制服の下のうずき(1974年製作の映画)

3.0

勝手に期待していた馬鹿馬鹿しさなんて全くなくてなんとなく観る態度も間違えたままイマイチハマらずに終わってしまった。文字列で思い返すと感慨深いものはあるが、ちょっとキザすぎてしんどくなってしまった。物モ>>続きを読む

アメリカン・サイコ(2000年製作の映画)

4.5

めちゃくちゃ面白いし、それ以上にえらい映画。ネットミームにもなってハロウィンでも仮装してる人よく見るからけっこう軽い感じかと思ってたけどこれ以上ないくらいしっかりした映画で、これコスプレする人ひとりひ>>続きを読む

ホームドラマ(1998年製作の映画)

4.8

U-NEXTにあって大歓喜。『焼け石に水』の次に好き。大オチであってはならない既視感に苛まれて「こんな映画がいくつもあってまるか(笑)」となってしまったが、終わるところで終わってたら危うく★5つけちゃ>>続きを読む

チャレンジャーズ(2023年製作の映画)

4.0

こないだ目ん玉まん丸にして勧められて、今日ふたりで目ん玉まん丸にして語り合った。そんくらいは面白い。際立って斬新な手法を使ってるわけではないにも関わらず、そこらへんの凡庸さとは一線を画した完璧すぎなシ>>続きを読む

フリークス(怪物團/神の子ら)(1932年製作の映画)

5.0

「美への執着は文明の誕生以来深く根ざした衝動であり身体的に障害のある人々に対する拒否反応は昔から長く培われてきた考え方の結果と言える」。いくつかの混沌とした間違いを含め、一世紀前に作られたこの映画から>>続きを読む

セックス依存症だった私へ(2008年製作の映画)

1.9

すっごく分かるのに、ぜんぶ分かるのに何ひとつ好きになれないまま終わった、それなりに印象的なショットとかもあるんだけどそれすら見慣れた感じでつまらなく思えてしまう。わざわざ比べるものでもないんだけどトリ>>続きを読む

快楽(1952年製作の映画)

3.9

幸福と快楽の話。「幸福とは悲しいものなのさ」ゴダールとファスビンダーが後に引用する一文。でもむしろ後の2人の方が上手に語れているような気もする。タイトル含め議題について考えたいところだが、良い意味でも>>続きを読む

あなたの目になりたい(1943年製作の映画)

4.1

ギトリで好きと言えるのが『毒薬』の一本だけだったんだが、これはけっこう良かった。ショットも洒落てて面白い。当時2人が実際に夫婦だったことを知ってなんとなく納得。だからまるで愛を確かめているような手触り>>続きを読む

我輩はカモである(1933年製作の映画)

3.5

まじで前半の記憶がないけど、半分越えたくらいから急に面白くなった気がする。ギャグ全然ウケないからしんどいなと思ってたけどそれも後半からなんだか笑えてきた。もう戦争じゃとなってからの潜入したりするくだり>>続きを読む

パラドクス(2014年製作の映画)

5.0

まさかのど傑作。やることぜんぶやっといて振り出しに戻すという嘘みたいな豪快さ。「人生は一本道である」という言葉も(真実だけが置き去りにされて)根本的に裏切られ、未知なる時間だけが無情に体感されてゆくと>>続きを読む

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(2002年製作の映画)

4.5

おもろ。『ペンタゴン・ペーパーズ』と並んで今のところスピルバーグのお気に入り。なんとなくスコセッシの『シャッターアイランド』とかと似てるものを感じたりする。ディカプリオがいるからってのもそりゃあるけど>>続きを読む

ブロークン・ジェネレーション/撲殺!射殺!極限の暴力少年たち(1985年製作の映画)

4.3

例えば誰かに同情したとき、自分のそういう感情がなんとなく嘘っぽく感じる時というのがあって、そしてその嘘っぽさを、自ら名付けた訳ではないにせよまさに「ヒューマニティー」とかいうので覆い隠そうとするという>>続きを読む

BPM ビート・パー・ミニット(2017年製作の映画)

4.5

例えばかつて愛した人と過ごした時間について言葉で語ることは不可能で、それはこの映画が描き出そうとしたリアルとしか言いようのないある種の「うごき」といったものに対する感想の遣り場の無さに似ていたりするか>>続きを読む