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暴力脱獄のevergla00のネタバレレビュー・内容・結末

暴力脱獄(1967年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

邦題から”Prison Break”系を期待したのですが…、ん?”Shawshank”系か?と戸惑い、ぼーっと鑑賞していた私を一気に釘付けにしたのは、あの名台詞が始まった瞬間でした。

“What we've got here is ... failure to communicate. Some men you just can't reach. So you get what we had here last week, which is the way he wants it. Well, he gets it. I don't like it any more than you men.”

独特の甲高い声とアクセント。
何百回と耳にしたこの台詞が本作由来だったとは!お恥ずかしながら知りませんでした。しかもどこで繰り返し聞いていたか覚えておらず…、調べてGuns N’ Rosesの”Civil War”だと分かりました。(その後 ”Madagascar” でも使用。)
観て良かった…。


看守長を頂点とする刑務所の規律や、囚人同士で決めたくだらない取り決めを、静かにせせら笑う主人公Luke。
彼は社会や組織の支配を拒み、権力に挑み続ける反骨精神を体現しているとのことです。Draglineに何度殴られても立ち上がり、何度連れ戻されても脱獄を試みる姿にそれが見て取れます。
そういった「対抗」は、母親の死を境に過激になりました。それまでは、ポーカーでも舗装作業でも、「ルール内」で相手の裏をかくという程度で、卵大食いと同じく、単調で退屈な監獄生活のむしろ楽しいスパイスとして微笑ましいくらいでした。

たとえ自分が対象でも、ゴマスリは大嫌い。仲間とつるむのも苦手。計画性ゼロ。
思いのまま、気の向くまま、我が道を行く。

その道を塞ぐ高い壁が、明らかに勝ち目のない相手だとしても、敗北を認めずに手向かう。
自分を止めるのは死のみ。

瀕死のLukeを乗せた車がGodfreyのサングラスを粉々に砕きます。物言わぬ看守のあのサングラスは、自由を制限する監視の象徴であり、Lukeが見せる笑顔によって、この対決が相討ちに終わったことを示唆しているように感じました。

また、パーキングメーターの ”VIOLATION”や交通標識が、規則の象徴として何度も映り込んでいました。冒頭の逮捕時と最後の病院搬送時、いずれも信号機は途中で青から赤へ変わります。

Lukeの歌、卵(=イースター?)大食い後のポーズ、エンディングの十字路、写真の十字型の裂け目など、分かりやすいキリスト教要素も満載でした。凶悪犯罪を起こすようなキャラでもないのに、必要以上に痛めつけられ、仲間の期待と崇拝を背負っての「殉教」後に偶像化される点で、キリストと類似しているでしょうか。

囚人番号37について。

新約聖書ルカによる福音書第1章にある、
37 “For with God nothing will be impossible.”
(NKJV) の ”nothing”にかけているという考察を読みました。

また、Sin, Faith, Dutyを説く同書第17章には37節あります。

その17:37は以下の通り。

(New King James Version)
37 And they answered and said to Him, “Where, Lord?”
So He said to them, “Wherever the body is, there the eagles will be gathered together.”

(New International Version)
37 “Where, Lord?” they asked.
He replied, “Where there is a dead body, there the vultures will gather.”

Eaglesかvulturesかで、現代では印象が真逆になる気がしますが、vulturesの方が適切な訳のようです。

死体(腐肉)にハゲタカ・ハゲワシが集まるように、私(キリスト)のいる所にあなたもいる。

“Wherever I will be, there you likewise will be.”
(DAVID N. BIVIN. A Body, Vultures and the Son of Man (Luke17:37). Jerusalem Perspective. Updated: Nov 9, 2023.)

神への語りかけこそ、”failure to communicate” のようでしたが、この17:37は、神からLukeへ与えられた答えになるのではないかと思いました。


「ルールってのは破るためにあんだろ?😎」系の人はLukeに心酔するのかも?自分は大人しくしていたほうが結果的に早く出所できるとどうしても考えてしまい、Lukeの言動に共感や羨望は湧きませんでした。しかしこういう思考回路が、既に体制側に取り込まれている証拠なのかも知れませんね😅

キリストも反社会分子だった。
社会不適合者に送る讃美歌のような作品でした。

“Yeah, well, sometimes nothing can be a real cool hand.”

“Arletta, I tried. I mean, to live always free and above board like you. But I don't know. I just can't seem to find no elbow room.”

“….. calling it your job don't make it right.”

🥚🥚🥚🥚🥚🥚🥚🥚

茹でた卵は200個。
Paul Newnanは、途中吐き出しつつ8個を口にしたとのこと。
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