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猿の惑星・征服のarchのレビュー・感想・評価

猿の惑星・征服(1972年製作の映画)
4.2
前作のどれよりもダークに絶望的な一作だ。

前作で逃げることになった赤ちゃんマイロ(シーザー)が主人公だ。
犬猫がいなくなり、猿はペットにそして奴隷になっている時代。
コーネリアスが告げた猿が人類を支配する過程の再現がそこに行われている。歴史は繰り返す、それが猿の惑星のテーマであり、人類への冷めた視点を感じさせる部分だ。少しターミネーター的な終末予言ものになってきた。

革命、という表現が正しいのか。それほどに今作の猿たちの反逆にカタルシスはなく、ただただ恐ろしいものとなっている。作品を重ねる毎に特殊メイクの顔から感情が読み取れるようになってきて、その怒りの感情が強く感じさせてくる。

猿と人間の関係、それは合わせ鏡のような関係だ。そこが種は違えど、似たような遺伝子構造を持ち、自らの醜い部分(野獣性)を相手に見る。自分の姿を客観視出来ず、野蛮を許すなと言いながら、人を殴り殺す。迸る暴力と憎悪を徹底して描いていた。

面白いのは黒人男性の視点。かつて同じ人間でありながら奴隷とされていた黒人は奴隷の末裔としてシーザーと激論を交わす。
黒人の奴隷解放にキング牧師がいたように暴力では自由を勝ち取れないことは証明されてきただからこそ、マクドナルドは「暴力で自由は勝ち取れない」と語るのだ。かつてブラックパンサー党という歴史があったからこそ尚更だ。
だが、シーザーは聞かない。途中セリフで「キングは死んだ」と言い放つのも暗示している。
シーザーは言葉は喋れるが、特別賢い訳では無い。だから彼の行動は感情によるものでしかないのだ。
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