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私たちの話し方のRinのレビュー・感想・評価

私たちの話し方(2024年製作の映画)
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対等な自然言語としての手話──第20回大阪アジアン映画祭コンペ。昨夜大阪入りして今朝から私のOAFFはスタート。そして人生初テアトル梅田。1本目からクオリティが高く上々の滑りだしになった(その後2本目の『青春2001』で撃沈)。ろう者をテーマにした映画はろう者と健常者の差異を強調するか同一性を強調するかで大きく二分されるイメージがある。例えば『ぼくの生きてる、ふたつの世界』は前者、『コーダ あいのうた』は後者といったかんじで。『私たちの話し方』は中間あるいは第三のタイプで、コミュニケーション手段の差異はあれどその手段の価値は対等だというメッセージを強く打ち出した作品だった。手話は音声言語の代用品ではなく独立した自然言語でありそのことに誇りを持っている話者がいるという視点の置きどころがまず素晴らしく、音を中心とした細やかな演出も非常に好印象だった。上映後に監督自身の口から補足もあったが、すべてのろう者が手話に拘っているわけではなく、劇中でも言及されていたように手話(あるいは読唇による口話)を脱して人工内耳による口話に変わることを望むろう者ももちろん存在する。本作ではろう者の中の複数の立場を登場人物に配置しつつ、医療ビジネスの思惑やDI&E(ダイバーシティ・インクルージョン&イクオリティ)の欺瞞もレイヤーとして編みこんでおり、入念な下調べに裏打ちされた緊密な脚本構成を感じさせる意欲作だった。今年のOAFFコンペの中でも随一の出来と予想。これは劇場公開されてほしい。

昨年のOAFFに来ていた黃綺琳(ノリス・ウォン)『作詞家志望』も記憶に新しい鍾雪瑩(ジョン・シュッイン)の存在感が光る。30歳には見えなすぎる。
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