このレビューはネタバレを含みます
抑圧されたペニスが暴発する時──石油会社の御曹司カイルとその親友ミッチ、カイルの新妻ルーシー、カイルの妹マリリーの4人が展開する四角関係のメロドラマ。それぞれの役柄が“理性と欲望/男と女”のツーバイツーのマトリックスの1箇所に該当する。欲望1(♂)×理性1(♂)×理性2(♀)×欲望2(♀)。「記号的」という言葉は映画の感想で大抵悪い意味で使われるけど、本作の人物造形は優れて記号的だと言いたい。
上映時間100分の中で、何度扉が開閉しただろうか。欲望と理性が互いに牽制し合うかのように、あらゆる部屋の扉が開放と閉鎖を繰り返す。カイルが医師から精子の運動能力が低いと診断されることによって欲望と理性のバランスは崩壊を始める。男性機能を否定された欲望1(♂)ことカイルは食器棚の扉を開けまくり、欲望2(♀)ことマリリーと接触することで拳銃(=ペニス)を暴発させてしまう。そしてラスト、マリリーはルーシーとともに家を出ていく想い人のミッチを見た後、机の上にあった鉄塔の模型を撫でながら思いに浸る。手に入らなかったペニス(ミッチ)を思っているわけで。なかなかにすんごい終わり方である。
最近アラン・ギロディをたくさん観ていたからペニスは普通に画面にうつっているモノな気がしてしまっていたが、そういえば一般的な映画では別の何かがペニスを表象する形で描かれるんでした。
【死ぬまでに観たい映画1001本(第五版)】
342/1001