Eike

レックのEikeのレビュー・感想・評価

レック(2007年製作の映画)
3.6
2007年の作品。
アメリカ映画の影響は疑いようがありませんが米映画では見られなくなった大胆さや、作り手の「やる気」がきちんと感じられ、思いの外引き締まった作品になっています。
結果として本国ではフランチャイズ化され、アメリカでもリメイクされた立派な「成功作」と言えるでしょう。
「ゾンビ」も「POV形式」も元々はアメリカ映画の十八番な訳ですが、このスペイン産ホラー映画の魅力はどこにあるのでしょうか。

バルセロナの消防署を夜間取材中の女性キャスター、アンジェラ(可愛い)とカメラマンのパブロは急遽出動に同行し、あるアパートに。
そこに住む老婆の様子がおかしいということで駆け付けた警官と一緒に様子を見に行くと部屋には錯乱状態の年配の女性が。
穏やかに語りかけながら近づく警官に突然、老婆が奇声を上げながら襲いかかります。
その狂気の叫び声こそ恐怖とパニックの一夜の幕開けを告げるゴングに他ならないのでした…。

ご存知「ブレアウィッチ・プロジェクト」と同じフォーマットで作られた「疑似ドキュメンタリー」ですね。同じころにアメリカ産では「クローバー・フィールド」なんてのもありましたが対象との「距離感が近いほど効果的」な手法なわけで、本作の方がその設定を上手く活かしている気がします。
一見そっけない映像にも見えますが設定上、カメラは回りっぱなしの「長回し」で作られている設定であり、編集が入っていると観客に感じさせたのでは失敗な訳で、役者も演出もタイミングや動きを入念に合わせなければならないことになりますから見かけほど簡単じゃぁない筈。
本作においては特に後半はかなり激しい動きの連続なのですが緊張感が途切れることなくちゃんと盛り上がっていて楽しめます。
その後半ではいかにも「カトリック」の国らしい意外な事の真相が暗示されたりして中々興味深く、 映画版「お化け屋敷」としてはかなり上出来。

本作の成功はやはり、とあるアパートメント内に限定されていて無駄にスケールを大きくしていない点が賢明であったと思います。
そもそも本作は元はビデオ販売用の「企画もの」だったそうです。
低予算の作品である事は明らかで、出演者もほぼ無名の方々であり、また彼らにもストーリーの詳細は明かしていなかったそう。
シナリオもその日の撮影分は当日に渡すなどして常に緊張感を醸し出す工夫をしたそうです。
そのため本作の撮影は時系列通りに行われ、演技陣も自分たちが演じるキャラクターが次のシーンでどうなるか分からないまま演技する状況に置かれていてその不安感が巧く生かされています。
またスタジオでの撮影は皆無ですべてロケで行われていることもリアル感を産み出す点で効果を上げている気がいたします。
こうした工夫とやる気がラテンの国の「元気なゾンビ」のユニークさを支えている気がしますね。
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