1962年製作公開。脚本熊井啓、江崎実生。監督舛田利雄。
コマキストなので吉永小百合には何の興味も湧かなかったけれど、劇場に貼られているポスターや劇場近所の書店に飾られているポートレイトや撮影中のスナップ写真を眺めていると思いのほか美人じゃんと思う。今回は、脚本熊井啓に惹かれて出掛けます。
今日が水揚げだという芸者の卵ユキ、花も恥じらう17歳の吉永小百合が演じます。そんな彼女をいいようにするには300万円という大金が必要。その金を出した商事会社の社長さんのところに行かなきゃならないのにユキはバックレてしまうんです。バックレシーンが凄くって、もはやこころここにない社長さんの前で舞台に立ち日舞を踊る吉永小百合が映されるのですが、吉永小百合のアップになっていくととそのまま鬘が取られ、カメラが引いて行くとそこは、あらまぁ、楽屋になっているのです。なかなか恐ろしいカットです。そしてユキの決意の表情に変わるのです。そうなると仕切っていた地回りは面目丸つぶれでユキを探し出そうと町中を手配いたします。そんな彼女がバタリとあったのが幼馴染の三郎/浜田光夫です。かくかくしかじかで幼馴染の誼だからと助けてあげるのですが、その三郎にしたって地元のチンピラ。そんなものに身を預けて大丈夫なのかと思って観ていると、売り飛ばせば金になる、でもそのまま売り飛ばすには惜しいスケじゃねえか、と仲間内でヒソヒソ。でも、そうは問屋が卸しません。相手は同業者で仁義ってものがございます。兄貴分の小池朝雄にもスジってものがございまして、三下のやったことはやったことでしかたがありませんが自分の親分に恥をかかせちゃいられません。折を見て帰さなければならないと三郎たちに言い含めます。勿論、キズモノになんてするんじゃねえぞ、とドスを利かせます。
と、ストーリーは吉永小百合の行く末を巡っていくのですが、仕立は音楽映画です。仲間のひとりに坂本九がいて、達者な芸を観ることができます。かなりくどいですけれども。小百合の血のつながらぬ兄役で高橋英樹が出ています。小百合への道ならぬ思いを秘める難しい役柄です。まだ新人の頃でしょうか。大物感に溢れていています。が、新人王を狙うようなボクサー役であるにもかかわらずパンチは大振り、腰も引けてます。ボクシングシーンは観てられませんわ。しかも素人相手に喧嘩までして、ライセンスは取り上げられないのでしょうか。
いつも思うのだけど見た目パッとしない浜田光夫が主演を張っていたってどんな事情があるのだろう。いや、チンピラを演じて浅草の町を駆け回っている姿は瑞々しいばかりなのですけれど。
神保町シアター 映画女優デビュー65周年記念企画 1960年代――吉永小百合と私たちの青春 にて