囚人13号

スリ(掏摸)の囚人13号のレビュー・感想・評価

スリ(掏摸)(1959年製作の映画)
4.0
〈シネマトグラフ覚書〉を一読してから鑑賞するとより楽しめるかも。映画の始祖的な立場に当たる演劇を親の仇みたいに拒絶しててすげー怖い。
そもそも「演技」という概念が映画に介入してる時点で演劇の黙殺など不可能なのに、まぁこの試みが成功しているかは別としてゴダールがグリフィスに逆らいカット繋ぎを崩したように、固定観念に逆らうアウトロー精神が時代を創っていくのだろうと身に染みました。

故に必然であった素人起用もネオレアリズモとは意図も異なっており全く演技させず、常に仮面のような無表情を強要しているらしいので度々小津との比較対象になるが、しかしブレッソンにとって俳優も自己の芸術を形作るただの道具に他ならない。

けれどもスリをやってのけるシーンの極めて映画的な瞬間、白い手と顔面の厳ついカットバックを「映画」と呼ばずして一体何と言えばいいのか。ブレッソンの"カット"は"ショット"よりも遥かに鋭利で冷たく、本作の接写が人体を分解していくように観客の瞳を切りつける。
囚人13号

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