碧

そして船は行くの碧のレビュー・感想・評価

そして船は行く(1983年製作の映画)
3.5
無音のモノクロ画像から音と色が春の訪れのように少しづつ現れてくる。
歌姫の葬送は美しくきらめく造り物の空と海に風に運ばれ散り散りに消えていくけど、
大型船のボイラーの轟音にも負けなず歌い手たちの歌声は力強い。

豪華客船に乗り合わせた高名な人々は目が笑っていない。女性達は凍りついたような無表情。ドロテア(サラ・ジェーン・ヴァリー)だけが野の花のような典雅で自然な微笑み。彼女をこの映画でよく表立って見かけるけど、レンブラントの夜警の少女のように重厚な群像劇の中で異質だ。

突然現れた難民や軍艦に船は危機に陥る。ピナ・バウシュどこかで踊るのかなと見てたけれど、それまで丁寧に繊細に情景が描写されてきたのに、最後突然超システマティックな撮影風景の舞台裏が。
天才はどこまでも既成概念を破壊しつづける。
碧