LEONkei

氷点のLEONkeiのレビュー・感想・評価

氷点(1966年製作の映画)
3.8
罪なき罪人を裁くのは罪深い人々によって甚振られ、謂れの無い贖罪の意識に追い込まれる。


夫は我が幼な子を殺した犯人の子(赤ん坊)を義侠心から養子として引き取ると言う、普通に考えれば余りにも理不尽で残酷なその行為に妻は知らずに愛情込めて我が子の様に育てる。

何故ゆえに夫は妻に内緒で犯人の子を養子にしたのか…、それには夫の悍ましい人間の醜さを露呈する非情な理由がある。

清廉潔癖な医師で夫役の〝船越英二〟は生真面目だが神経質な性格が上手に表現され、その妻〝若尾文子〟は艶っぽい妖艶さの中に落ち着き払う静なる品。

男と女の関係は無理が通れば道理は引っ込む、腑に落ちずして不可思議で奇奇怪怪。

原作が秀作なので本作の構成も明解で中盤から後半に掛けての追い込みは前半部分の伏線回収に息を飲む、俳優陣は硬らず自然体の演技の攻防はさすが社会派〝山本薩夫〟監督ならではの色が濃く出ている。


人間と言うものは生半可な知識や知恵を身に付けたが為に自尊心を失い、汚らわしく醜い悪魔の果実を口に含み純潔をドス黒く染めてしまう。

罪の対義語は明確には存在しない..★,
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