JAmmyWAng

片腕カンフー対空とぶギロチンのJAmmyWAngのレビュー・感想・評価

5.0
それが如何に既成の枠組みや教義から外れていようとも、面白いものは貪欲に取り込んでとことん実践していくという純粋な姿勢が、しっかりとその形を歪めて凄まじい映像的強度となって立ち現れるジミー・ウォング先生の真骨頂がここにあります。

この世界のすべての映画が「ジミー・ウォング度」を競い合ったならば、間違い無く準優勝を決めるであろう超実力者の今作は、冒頭のギロチン使い・封神の山小屋に少しだけ映り込む本物の猿からラストにおける貫禄の棺桶に至るまで、事物も台詞もカンフーもその全てが虚構の中でいびつに輝きどうしようもなく躍動を繰り返す、常軌を逸したエンターテインメント精神の成し遂げる珠玉の大傑作であると私は信じて止みません。

「やってるか?」で登場しては指導という名のエゴをばら撒くジミー・ウォング先生の絶対的安心感と、「まあいい、片腕は皆殺しだ!」であらゆる常識人を恐怖のどん底に叩き込むギロチン使い・封神の明快な狂気。
それらがすべてイマジネーションの渦の中に、ムエタイもヨガも男も女も巻き込んで、血を流しギロチンを砕きながら渾然一体となって野蛮に溶け合っていくという強烈な運動性のその先に、まるでタランティーノの『デス・プルーフ』のように極めて荒々しくプリミティブな衝撃と快感が呼び起こされてしまうという奇跡の所業に私は最早言葉がありません。

人生において何か決定的に選択を誤った行為があるとすれば、それは恐らくこのDVDを手に取ってジミー・ウォング先生との邂逅を果たしてしまった事でしょう。しかしながら、私はそんな人生が嫌いではありません。

ジミー・ウォング先生、私のこの耳には、ギロチンが空を飛び風を切る素敵な音色が今も美しく鳴り響いています。
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