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ラヴ・ストリームスのJAmmyWAngのレビュー・感想・評価

ラヴ・ストリームス(1983年製作の映画)
4.9
ロバート周りの関係性の希薄さは『フェイシズ』的だし、社会的に精神科医を必要とするサラのパーソナリティは『こわれゆく女』だし、超ついでに言えば車の横転滑走は『グロリア』でもあった。それらがそれぞれの形で「愛」を描いていたのは明らかだけど、『オープニング・ナイト』でもボロボロになりながら現実に立ち向かうマートルを助けた舞台上での愛があったし、『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』では厄介な現実を舞台から観客への愛に代えて歌っていたと思うんですよね(Mr. Sophistication曰く"I can't give you anything but love")。

『ハズバンズ』とか『愛の奇跡』はまだ観てないから分からないけど、いずれにしても、カサヴェテスはこれまでも「愛」を描いてきたじゃないかと感じていて、本作はなんか総決算みたいな事になったりするのかと思えばそんな明確な筋道は無く、最終的には狂気的に愛へと回帰していく女と、それによって孤独になる男が描かれるのである。満を持して「愛の流れ」が物語の重心を獲得したら、結局どうしようもない現実こそが浮かび上がってきたという感じで、蓄積されてきたフィルモグラフィーによる重みが半端ないのである。

ラストシーンには、虚構でありながらも限り無く現実に肉迫する切実性があって、えーもうどうしようと思ってしまうのは確かなんだけど、でも多分、僕はこれをまだ本当の意味で飲み込めていないと思う。
とは言え、動物のくだりや、特に後半の夢シーンなどは、愛ゆえのとんでもない愛くるしさに溢れていて笑いを禁じ得なかったりもして、咀嚼仕切れない奥行きはあるけども、やっぱり作品は普遍的で豊かな情感に満ちているとも思う。

恐らく、僕は何度でもこの作品を観なければならないだろう。劇中何度も繰り返される、"love is a stream - it's continuous, it doesn't stop."という言説を、虚構的な狂気をベースに信じたい派(過激派)の一人として。

そしてラストシーンで流れるミルドレッド・ベイリーの、
"Where are you
Where have you gone without me
I thought you cared about me
Where are you"
というリリックにも、極めて禿同せざるを得ない派(現実派)の一人として。
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