たむランボー怒りの脱出

バイバイ・モンキー/コーネリアスの夢のたむランボー怒りの脱出のレビュー・感想・評価

4.0
終盤以外は結構退屈なんだが、ジェラール・ドパルデューが悲嘆に暮れてどうでもよくなった辺りから急激に面白くなる。建物に火が燃え広がっている最中、室内にじっと留まっているドパルデューの体に火が燃え移るときのその火の流れのスムーズさが怖すぎる。火は家具も人間も見境なく何の「判断」もなしに燃やすんだなというその当然さに戦慄したと同時に、この映画においてはそれが滑稽にも見える。

強烈だったのは猿の死体で、『キャリー』のパイパー・ローリーのように壁に磔にされている。
ワイズマンの『霊長類』を見たときにも強烈に感じたが、猿の死体は死ぬほど怖い。人間の死体より怖いかもしれない。猿の死体が出てくる映画、他には『ジャンク 死と惨劇』だろうか。黒沢清の『CURE』も?

唐突に現れる巨大ゴリラは『マイ・ワンダフル・ライフ』の巨大ロボと通じ合い、偶然拾った何かに愛情を注ぐ男というのは『I LOVE YOU』のキーホルダーと通じ合い、赤ん坊というのは『未来は女のものである』他、フェレーリ映画の主題である。夕陽海浜エンドは今まで見たフェレーリの映画全部そうだった気がする(『最後の晩餐』は違ったかな)。というようにマルコ・フェレーリの映画って結構限られた要素で出来ている気がするのだが、作品はどれもジャンルとして分類不可能な、また「どうしてこの映画を作ったのか」というような作り手の欲望が見えない不気味さがあって、捉えどころのなさの塊としての魅力を放っている。