垂直落下式サミング

自殺サークルの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

自殺サークル(2002年製作の映画)
3.5
「いっせーのー!」で血の海な新宿駅はゲリラ撮影らしい。プリーツスカートもルーズソックスも、肉片にまみれて真っ赤に染め上げる冒頭の大スペクタクルが大山場。
とりあえず、「集団自殺」っていう社会問題を字面だけで解釈してホラーに仕上げた感。その後から展開していく石橋凌が中心の刑事ドラマパートで、この社会現象の謎を解き明かそうと刑事たちが奮闘するのだけど、ジャパニーズホラーのような、しっかりした法則性が見出だせないから、サスペンスは尻すぼみ。
セリフもキャラクターも現実みなさすぎて、あんまりだったな。道を歩いてたら投身自殺した人が頭上に降ってきて、それが自分の彼氏だった女の子がどういう反応をするのかってのが面白いところなのに、そのシチュエーションで面白がらせてくれないのが致命的。今際の彼氏との会話も、その後の刑事との取り調べも、演劇的な会話すぎて微妙。
見世物映画の枠組みのなかに、やたらATGを持ち込んでくる。大人の人に怒られてもいいから、イッパツかましてやろうってヒネクレ美大生マインド。普通のエンタメしてますよって風を装いながら、これやられるとイラッとしちゃう気持ちわかるなあ。
園子温作品のなかでは、わかりやすい見所がしっかりあるから、僕は好きなほう。ネット上の「自殺サークル」なるものが姿をあらわして、ちゃんと実態のある犯罪組織として出てくるのがよかった。
逮捕されるときのリーダーがやたら饒舌に下町のオッサンみたいな口調で捲し立てる様に、『冷たい熱帯魚』のでんでんを感じる。
安っぽいアイドルソングが随所に挿入されるのも、園子温なんだなぁって感じ。十代そこらの子達に救われなきゃ生きてけないのが、この島国の病みをよくあらわしているなぁ~なんて思いました。