齋藤武市監督、宍戸錠主演の本格的なハードボイルド映画。地方都市に謎の男がやってきて２つの暗黒組織の対立を煽り殲滅させるというハメット「血の収穫」スタイルの血腥い非情な話で、清順『野獣の青春』前年製作の映画である。齋藤演出はまだ試行錯誤中、セットの造形を含めザラザラと乾いたハードボイルド的空間を十全に創出しているとは言い難いものの、スピーディーで歯切れがよく、佳作と言って良い。無国籍映画とハードボイルドの中間点で生煮え状態だった同年の宍戸＆齋藤『ひとり旅』から考えると大変な進歩で、綺麗ごとでない宍戸の冷酷なダーティ・ヒーローぶりはこの映画の時点で完成されており、フィルモグラフィ的にも無視できない映画になっている。
