三隅炎雄

右門捕物帖 蛇の目傘の女の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

右門捕物帖 蛇の目傘の女(1963年製作の映画)
4.2
大友柳太朗のむっつり右門第7作目にして最終作。これまでの怪奇趣味は消えユーモアも後退し、現代劇の刑事物に近いタッチの社会派作品になった。ここでの右門は組織人として苦悩し、自分の中に悪を見出すことになる。最早彼はヒーローであることを許されないのだ。映画は明朗で勧善懲悪な東映娯楽時代劇の終焉を告げるようにして終わる。前6作とは正反対のあまりに暗く異様なエンディングだ。

公開は1963年6月。翌月には大友も出演した『十七人の忍者』が公開され、集団時代劇がはじまる。翌年にはその集団時代劇の流れの中で「87分署」シリーズの翻案を試みた山下耕作の『江戸犯罪帳 黒い爪』が製作される。『蛇の目傘の女』は河野寿一にとっても大友柳太朗・千秋実にとっても代表作と言って良いもので、きちんと評価され位置付けされるべき傑作だ。
三隅炎雄

三隅炎雄