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ミスター・ジャイアンツ 勝利の旗のcatmanのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

1963年に日本一を達成した巨人軍の奮闘ぶりを、何と選手たち本人を役者に起用して描く虚実混交のスポーツ人情ドラマ。 同年のシーズンオフに制作され、翌1964年に公開。今じゃとても考えられない企画。
栄光の讀賣巨人軍&ミスタージャイアンツ長嶋茂雄をひたすら礼賛するプロパガンダ映画なので、長嶋が活躍して巨人が勝利する事で青少年を正しく導き、皆が幸せになるんだ、みたいな戯言をずっと聞かされる。ジャイアンツが嫌いな人(自分)にとっては耐え難い事この上ない90分😇

ただ往年のプロ野球ファンにとって珍品ならではの見所は多い。どうせ長嶋は添え物程度なんだろうと思っていたら、普通に主人公として全編に渡ってほぼ出ずっぱり、台詞も多い。事実上の主演なんだろうと思っていたフランキー堺は単なる脇役なのであった。むろんチョーさんの芝居はド素人のそれながら、各シーンに合わせた感情をそれなりに表現しつつプロの役者や子役との絡みも器用にこなしていてうっかり感心してしまう。えーこれも所謂ひとつの動物的勘の成せる技でしょうか。

若々しい王貞治の出番も多くて、ぎこちない台詞まわしが味わい深く、この頃はまだオロCでは無くリポDをこれ見よがしに飲んでいる。そして神様( )川上哲治までが、出番は僅かながら清々しいまでの棒演技を披露。それと面白いのはちょくちょく登場する藤田元司で、結構重要な場面に起用されていて笑ってしまう。実はノリの良い人だったのかもしれない。他にも広岡や国松、新人の柴田らのユルユルな小芝居を見せられる一方で、試合の場面で鮮明な記録映像が見られるのは野球ファンにとって非常に嬉しい。また多摩川グラウンドで本作の為に収録したと見られる、ミスターがノックを受けるシーンは意図的に尺を長く取っているらしく、彼の軽快なサード守備をじっくり見る事ができる。「ヘイ、ノッカー!もういっちょ!」なんて長嶋本人によるアフレコ付きなのはご愛嬌。

ゲスト出演の俳優陣がやたら豪華で、最後のジャイアンツ日本一の祝勝会には仲代達矢や宝田明ら東宝の男女のスターが本人役でずらりと登場、しまいにゃ服部良一が指揮を執り、選手と来賓が全員で『闘魂込めて』を合唱するという鬱な展開に。ちなみにOPで流れる主題歌は国民的歌手・坂本九によるもの。どんだけえ!

過去最長クラスのレビューになってしまった。
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