HidekiIshimoto

乱のHidekiIshimotoのレビュー・感想・評価

(1985年製作の映画)
5.0
黒澤黄金期を支えた橋本忍は著書『複眼の映像』で「時代劇の面白い材料が全部揃っている。なのに不思議と面白くない」と書いてる(うんそんな感じと俺も思ってた)。脚本がダメ以外の原因として黒澤が職人から芸術家になったから、と分析もしてる(だから美大卒業した頃何度も観ていた)。元は画家を志した黒澤も活劇を芸術にまで高めたかったんだと思う。けど活劇はどうやっても活劇であって活劇達人黒澤明はタルコフスキーじゃない。そんな思いのまま放置してた。ので分厚い宿題にしぶしぶ取り掛かる子どもの気分でまた観てみた。ら猛烈に打ちのめされた。阿蘇の大地までも自在に従わせる黒澤の演出。天才武満徹。天才ワダエミ。驚異の原田美枝子。今は橋本忍の霊を羅生門のイタコに召喚させて、芸術だってちゃんと面白いじゃないかと文句言いたい。日本で唯一アンゲロプロスに達した映画だぐらい言いたい。活劇として芸術に達してると言いたい。けどもう二度とこんな映画が撮られる可能性は日本にはないとも思う。日本以外でもないんじゃないかと思う。時代が変わったのだ。