乱の作品情報・感想・評価

「乱」に投稿された感想・評価

Mayuko

Mayukoの感想・評価

4.2

このレビューはネタバレを含みます

「これは夢か、いやここは地獄、地獄、無限地獄だ」

繰り返される愚かな人間の業。
黒澤明からの「人類への遺言」


「神や仏はいないのか、畜生! いるなら聞け! お前らは気まぐれないたずら小僧だ! 天上の退屈しのぎに人を殺して喜んでやがる。やい! 人間が泣き叫ぶのがそんなに面白いか!」

「言うな! 神や仏を罵るな! 神や仏は泣いているのだ。いつの世にも繰り返すこの人間の悪行、殺しあわねば生きていけぬ人間の愚かさは、神や仏も救う術はないのだ。泣くな! これが人の世だ。人間は幸せよりも悲しみを、安らぎよりも苦しみを追い求めているのだ。見ろ! 今あの一の城では、人間どもがその悲しみと苦しみを奪い合い、殺しあって喜んでおるわ!」
前作「影武者」は物語の影に隠れた黒澤明監督自身の「思われたい自分」を仄めかした映画だったが、本作は現実の自分を見つめた作品と言える気がする。

あれだけ強気で尊大な黒澤明自身が、病みに病んで、自殺未遂まで起こして復活。
しかし、復活というのは実に難業。
一度、膝をついた心と身体には、常に喪失感がつきまとう。

若い時はイケイケだった心も、老いさらばえてしまえば体力も気力もなくなる。
強気で尊大であればなおさらだ。

自身の築き上げた「国」は、気付けば自分のものではなくなり、陽気に後進に道を譲ろうと思っても…受け継ぐ者はなく。
ひとりぼっちになる。

愛されたいと強く望んで、故に、愛されているのだと、強く思い込んでいた結果。
時代に取り残され、それでも怒り続け吠え続け、やがて、自分が思うほどは愛されていないのだと受け止める。

主人公の秀虎には、そんな黒澤明の「オレはどこで間違ってしまったのだ?」という想いがこの壮大な悲劇の中で、死屍累々の映像の中で悠々と描かれる。

しかし、その救いようのない絶望や、失望、諦念さえも、エンターテイメントに仕上げてしまう黒澤明こそ、本当に別格だ。
父から「乱をまだ観てないなんてお前は馬鹿だ」と言われ続けて早10年、ようやく観た今なら分かる、やっばいの観ちゃったよ…仲代達矢・原田美枝子・鶴丸の演技も鬼気迫るし、手間暇掛けないとできない演出が痺れるほどかっこいい。そして今まで観た時代劇の中で段違いで色彩が美しかった。モノクロ時代に育ったのになんでこんなものが作れるんだ…
Sari

Sariの感想・評価

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2018/09/17 シネフィルWOWOW
【4Kデジタル修復版】
nanabee

nanabeeの感想・評価

4.7
監督が天気にこだわったのが納得出来る空でした、雲の動き日の差し方、唸るというのはこういう事かと実感。
馬と乗馬他にも今では無理だろうと思う時間をかけた映像は黒澤明監督の力を実感しました。
和製リア王。

黒澤映画独特の画面の流れ・動きの伝播の仕方があって、素人目にも特異さが伝わってくる

全編望遠レンズで撮ってる映像がほとんどで、どういう意図があるのか調べてみたら
遠くから撮ることで俳優の演技を邪魔しないようにする的なのがあったらしい

個人的にエンタメとして特に魅力を感じた訳ではなかった
なぜ黒澤明は古典をモチーフに映画を撮るのかよくわからん。このテの映画を娯楽として楽しんでる層は居るのか気になりはする

映像作りを楽しんでるのは伝わってくる
AKITO

AKITOの感想・評価

4.1
黒澤明版「リア王」。現世でも乱世でも正直者が馬鹿をみる。老人がとにかく走り、その子どもが女狐にたぶらかされる映画。狂阿弥が美味しい役所を演じている。耳の痛い真実の言葉よりも、耳障りの良い偽りを人間は信じる。人間は神仏にも救えない。悲劇。
Huluにて。
仲代達矢が良かった。
ピーターちょっとうるさい。
初めて観たのに、どこか懐かしいカメラワーク。ちょこちょこアラが見えるのも嫌いじゃない。大河ドラマのせいか?
解りやすい筋に派手な演出、キャラが立っているので退屈しなかった。(でも合戦のシーンは所々、退屈。)
池畑慎之介に違和感。
決して悪い映画じゃないけど、もう少し日本人でも楽しめる感じに作って欲しかったです。三兄弟の色分けや池畑慎之介の演技など、割り切りが良いと言うか、深さを感じない。でも脚本はきちんと乱世を描いているからストーリーには納得できる。仲代達矢や原田美枝子のメイク含む熱演も素晴らしい。

権力なんて握りたくないなー、と思わせる映画でした。この映画には町衆や農民などはほぼ登場せず、簡単に共感出来る人物が登場しないので個人的には息苦しかったのですが、もし池畑慎之介が他の役者だったらもう少し楽しめたのかもしれません。最後の方なんて半笑いで見てしまいました。そういった所が残念ながらも嫌いな映画ではなかった、なんとも不思議な映画でした。
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