キャッチ30

乱のキャッチ30のレビュー・感想・評価

(1985年製作の映画)
4.1
一言で表すなら地獄、悪夢、狂気といったところか。いずれにせよ、負の感情が映画を覆っている。戦国時代を背景に人間の欲望が渦巻いている。

一文字家当主秀虎は高齢の為、三人の息子に家督を継がせようとする。長男太郎には家督と一の城、次郎は二の城、三郎は三の城を守るように命じ、自分は余生を送るという。しかし、太郎の正室楓の方の策謀により、秀虎は息子達の裏切りに遭い、正気と狂気の間を彷徨う。

疑心暗鬼に陥り、恐怖に怯えた秀虎の姿は黒澤監督自身に見えた。実際に黒澤は秀虎と自分自身を重ね合わせたという。仲代達矢の演技は圧巻だが、原田美枝子の存在も大きい。彼女が演じる楓の方は二人の男を誘惑し、自分の家族を滅ぼした一文字家に復讐の刃を向ける。その姿はマクベス夫人を彷彿とさせる。

欲望と権力にまみれた戦国時代を黒澤監督は映し出す。そこには、悪夢と狂気と無間地獄のカオスが渦巻いている。