王冠と霜月いつか

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊の王冠と霜月いつかのネタバレレビュー・内容・結末

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「人間が人間であるための部品が決して少なくないように、自分が自分であるためには驚くほど多くのものが必要なの。 他人を隔てるための顔、それと意識しない声、目覚めのときに見つめる手、幼かった頃の記憶、未来の予感。それだけじゃないわ、私の電脳がアクセスできる膨大な情報やネットの広がり。それらすべてが私の一部であり、私という意識そのものを生み出し、そして同時に、私をある限界に制約し続ける。」-草薙素子

過去に鑑賞済みだけれどレビューを書いてない映画を改めてその①

『疑似体験も夢も、存在する情報は全て現実であり、そして幻なんだ。』
これはバトーの台詞ですが、最近というか常に過去に囚われて落ち込みモードに入るのを楽しんで?いる私には、ハッとさせられるシーンでした。そうか、幻なんだと。

幻~(笑)

人間とは?自我とは?魂とは?生命体とは?DNAとは?

童子(わらべ)の時は語ることも童子のごとく、思うことも童子の如く、論ずることも童子の如くなりしが、人と成りては童子のことを棄てたり。
今我ら、鏡もて見るごとく、見るところ朧なり。

上記は劇中で引用される聖書の一節です。押井守監督はこういった引用を多用されます。続編イノセンスでは輪を掛けて、というか引用だらけです。
↑は聖書の引用ですが、素子が人形使いと融合して義体=実体を捨てるというのは、仏教でいうところの『解脱』に当たるのかな?と思いました。その解脱した少佐が、弥勒菩薩となって民=バトーを救うために現世に現れるのが、続編イノセンスかなと。

「諸法無我」
私とは?アイデンティティとは?を証明しようと突き詰めていくと、我は無いという事に突き当たる訳(だと思われます)で、アイデンティティの確立なんて意味のないことなんだよね。なんて強がってみたりして(笑)

20代前半に初めてこの作品を観た時は、正直、消化不良に陥りました。もし貴方がそうだとしても、経験を積んだいつの日か、「あ、監督の言いたい事って、こういう事じゃないかな?」と思える日が来ると思います。


自分には自分が見えないことをお忘れなく。できるのは、鏡に映った姿を覗き込むことだけだ。 
-ジャック・リー