KUROTORA

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊のKUROTORAのレビュー・感想・評価

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊(1995年製作の映画)
5.0
劇場公開から毎年1回は見返す作品、どの場面を切り取っても見れるBGVとして、アニメ作品としてはトップクラス。

原作ファンから異論はあると思うが、90分の尺におさめるためにキャラクター性を排除した事で、鑑賞者が作品自体のメッセージ性をそれぞれに受け止める余白になっていると感じた。

記憶と記録、自分を自分と認識している自我とは何か、生命の定義、それらを語りかけてくる。

2025年4月時点で、作中に出てくるハードウェアの実現には未だに高い壁があるように見えるが、AIは単純なユーザーへの応答をするチャットから、AIエージェント機能を有し、ユーザーの設定した目標に対して自己反復型の作業を繰り返しタスクを遂行するまでになっていて、私もAIエージェントを使い、幾つかのアプリを簡単に作って納品したくらいだ、シンギュラリティポイントまで、あと少しであると感じる。

また、劇中で人間の脳をハッキングする描写は、いかにもSF的だが、現実ではコンピュータをハッキングするよりも簡単に人間を操ることが出来る、スマホ1台で人の弱みを使って操る事を、ルフィーに始まるトクリュウ事件が証明してしまった。今後、人形使いのようなAIエージェントができてもおかしくなく、意志の希薄な人が操られる世界が来ると想像している。

そして、劇中でAIと融合する描写があるが、すでに人間は情報と接したとき、自覚のある無しに関わらず、常に影響を受け変化をしているし、その影響を活用するのかどうかもまた、接した情報に左右されている。それは、SNSのアクセスを増やす為のアルゴリズムが、エコーチャンバー現象をおこし、選挙などの社会に影響が出るほどに個人の行動を左右している。今後は人間が作っていたアルゴリズムをAIが作成・最適化し、変動する情勢に合わせて変更され、人間にはそれが操作された物なのか、自発的な物なのか判別できなくなるだろう。
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