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グエムル -漢江の怪物-のHULのレビュー・感想・評価

グエムル -漢江の怪物-(2006年製作の映画)
4.3
倫理観のない理不尽なアメリカ人科学者、断りきれない韓国人の加担、川へ膨大に捨てられる薬品……
些細な悪意が怪物を生み出していく過程が不気味でテンポがよく、本当によくできた冒頭で心をつかまれる。
登場人物たちは少し頭の回りが悪い主人公、そこへ容赦なく突っ込む弟、世渡りに長けている風なだけの父親、どこか天然な妹と
誰もが欠陥を持ち、キャラが立っていて独特でいい加減な世界観がすばやく伝わってくる。
さらに怪物登場の演出も際立っており、日常の中に突然現れる非日常。
どんどん視点が切り替わり、誰もが突然非日常に巻き込まれるディテールのアイディアが数多く、のんきな電車の車窓かから見える怪物の大暴れは絶品。
怪物の姿を出し惜しみせずに皮肉とユーモアを交えている中、登場人物たちが妙にまじめすぎないことで完成度高くまとまっている。
さらには欠陥だらけの家族が、娘の救出のために迷いなく一致団結し、高圧的な政府の権力から脱出することでストーリーが一気に加速し、まったくほれぼれするとしかいいようがない。

後半は、弟が学生運動仕込みのスキルで警官を出し抜き、グエムルの居場所を特定。
普段居眠りばかりだった主人公には麻酔がきかず、隙をついて拘束を振りほどき、娘の囚われている場所へ収束していく。
その間の救出を待つ娘のシーンもアイディア満載で、動きの読めない怪物の恐怖が素晴らしい。
火炎瓶で追い詰める弟、ついに終わりの見えてきた怪物の最期で手を滑らせると、アーチェリー選手の妹が火矢を撃ちこみ、ラストでは主人公が締める。
本当にお手本のようなたたみかけでカタルシスがすごい。
娘は助からなかったものの、助けを待つだけでなく、小さな命を救って終わるラストも見事の一言。
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