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キツツキと雨のsuiのレビュー・感想・評価

キツツキと雨(2011年製作の映画)
5.0
ほっこり心温まるお話。
役所広司演じる克彦は、一見取っ付きにくそうだけど頼まれれば渋々ながらも手伝ってくれる根は優しい人。
 
息子に対しては「怒り方こっわ」と思ったけど、子供が怒ってペチペチ叩いてくるような感じで息子を叩いてるのは本気でぶん殴る気はないんだなと感じて微笑ましかった。根は優しいし、息子を想う気持ちもあるけど不器用で上手く表現できない。それがもどかしくてまたイライラするんだろなぁ。男の人あるあるだと思うわー。
 
小栗旬演じる映画監督の田辺は自分の作品に熱い思いがあるはずなのにコミュ障すぎるのと自身なさすぎるので逃げ腰。そんな田辺に克彦は映画って面白いなぁとか、続きどうなるんだとか純粋な好奇心でぐいぐい話しかけるのがいいなぁ。
脚本読んで「面白かった」「少し泣いた」と素直に作品を楽しんでくれたり、何かと手伝ったり声を掛けてくれたり、椅子を作ってたりと父親のように世話を焼いてくれる克彦に少しずつ心を開いていく描写が繊細で好き。
 
克彦も田辺を息子に重ねて、田辺と関わるうちに息子に対する気持ちが変化していく。働いてない事を咎め、勝手に就職話を進める親戚に対して「こいつの気持ちもあるやろがい!」と怒鳴るシーンはニヤニヤしちゃった( ´∀`)
 
冒頭では克彦ひとりで食べてた朝食シーン。
最後は息子と2人で食べてるのがすごく良い!
しかも朝食めちゃくちゃ美味そうに食べるから味のり食べたくなっちゃった。(将棋のシーンも味のりがやたら美味そうに見えた)
 
同監督の「おらおらでひとりいぐも」でも感じたけど、人の心の変化を繊細に描くのが上手。
まぁまぁありがちな『一瞬で心境が変化する』描写はびっくりしてしまうので、こんなふうにじっくり描いてくれると心に染み込みやすい。
 
大きな事件が起きる訳でもなく、大きな変化がある訳でもないけど日常のちょっとしたイレギュラーとか人との関わりとかをポジティブに変換して吸収する事でほんの少し気持ちが変化したり、視野が広くなったりする。そのほんの少しの変化の積み重ねで、人生は大きく変わるのかもしれない。
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