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プラトーンのKHのレビュー・感想・評価

プラトーン(1986年製作の映画)
4.1
2024年度の年間ノルマ70本中42作品目。
見させて頂きました。

今回はAmazonプライムでの視聴です。また過去に見た事がない戦争映画であり、
こちらがいつの時代のどの戦争かも知りませんでしたので、

予め、軽く勉強してからの視聴となりました。

今作の舞台は『ベトナム戦争』時のアメリカ側視点の映画となっております。

当時南北に分断されていた北ベトナムと、南ベトナムによる社会主義、資本主義間で発生した戦争ですが、
ソビエト連邦とアメリカ合衆国の代理戦争と言われております。

また、この戦争がその戦力差や物量、経済から
『象と蟻の戦い』と言われた戦争だったが、
およそ20年も続く長い戦いとなった挙句に、
結果として北ベトナムがサイゴンを陥落させ南ベトナム政府が無条件降伏を発表した事でアメリカ軍は撤退となり、
アメリカ唯一の敗戦となっております。

まぁ戦争が発生した理由はドミノ理論とか色々ありますが、この辺はまぁあまりごちゃごちゃ言ってもアレなのでとりあえずは割愛して、まずは作品のネタバレなしの感想をば述べます。

ちなみに『プラトーン』という言葉を調べました。個人的には場所?かな?とか思っておりましたが、
3~4の分隊から構成され、尉官が指揮する部隊、小隊。

という意味だそうです。


『こんな僕でも流石にあの有名な両手を広げて天を仰ぐあのシーンはもちろん見たことがありますし、アレこそがプラトーン。プラトーンとはあのシーンを指すのだと思っておりましたが、実は見た事がなかったです。

そんな映画史に残るほどの名シーンをこの目で見れた喜びも束の間、この時代によくぞここまでの戦争映画が作れたなと言う印象でした。
また、今回はアメリカ視点ではありましたが、歴史を勉強すると改めて全然知らなかった事が多く、作品に対して非常に没入してみれた様に思います。
また、僕が『戦争映画』を視聴する際に意識しているのは実際に戦地で戦う兵士の心境ですが、今作では様々な葛藤が見れて非常に面白かったです。
また、もし自分ならと言う自問自答を考えさせられる内容としても賛否の分かれそうな作品であり、そりゃあ歴史に残る名作だわと言う印象を受けました。
舞台がベトナム戦争なだけに基本はジャングルの中を行軍したり、
地方特有の虫やスコールやトンネルや待ち伏せ、トラップという他の戦地ではあまり無いこの戦争ならではの装置がいい緊張感をずっと発生させており、
とにかく徒労感というか疲労感というか、実際の撮影もエグいくらい体力を使っただろうなと感じました。
とりあえずこのくらいにして残りはネタバレで話します。本当に凄まじい作品でした。
まだ見てない方は是非一度オススメできる作品です。』


またここから先は作品のネタバレを含む感想になりますのでご注意ください。


まず、作品はテイラーが新兵として戦地に来るところから始まりますが、
個人的にいきなり戦地というよりは
今作の様に新兵が初めて戦地に来る事で、目線が見てる我々と近いので
主人公に対して感情移入がしやすくすんなりと作品に入れた様に思います。
しかしながら開始して数秒で死体袋が出てくるので、自分の中の脳内偏差値をかなり上げる必要性を感じました。
この作品は生半可な作品ではないと言う非常にいい導入でした。

やはりなんと言ってもジャングル内の進行はもう考えただけで厳しく、早々に蟻に噛みつかれるなどの洗礼は見てる我々の心をアッサリとへし折ってくれました。
絶対に嫌です。蟻とか蚊がずっとブンブンしてる様なところにずっといるのは、

しかし作品の時系列が進むにつれ、次第にそんなことはすぐに気にならなくなるというか、戦地になれると頬に付いたヒルにさえ何も思わなくなると言う心の変化も細かいなぁと思います。

テイラーは作中で、『地獄とは理性の通じないところ』と表現しているシーンが印象的で、
そもそも話し合いで解決する様な問題ならば戦争にはなっていないと言うのがよくわかるセリフだと思いました。
また、戦争が人から理性を奪うのか、
理性を失ったから戦争が発生してしまうのか、どちらが先かはわかりません。或いは両方があるからなのかもしれません。

テイラーのいる小隊は
あまり慕われてない若い中尉のいる小隊で、
その中に、バーンズとエリアスという二人の軍曹が小隊内で対立しており、
作品を象徴するあのシーンが、まさかエリアスだったのか‼︎という衝撃がありました。

ベトナム戦争では後に、多くの戦争犯罪と呼ばれる行為があった事も有名です。
例えば、枯葉剤や、ナパーム弾などがありますが、今作では『ソンミ村虐殺事件』からなる題材を取り入れております。
実際に作中に出てきた集落がそうと言うわけでは無いですが、

結果的にバーンズとエリアスの対立を浮き彫りにする内容だったのは言うまでもなく、
また、現実にアメリカ軍はジャングルに潜むゲリラと集落で暮らす民間人との区別が全く付かずに、結果として集落にいる500人余りを虐殺したという事件が発生している。

作中で出てきた集落が本当のところゲリラを庇っていたのか、或いはいきなりやってきた北ベトナム軍が無理矢理に武器や兵站を隠していったのかは定かでは無いため、
この二人の対立は本当に賛否の分かれる部分である。

また、この集落にたどり着く直前に喉を切られて見せしめにされた味方の死体を目撃した事で、
バーンズは戦鬼と代わってしまい、
まだ理性の残るエリアスはだからと言って疑わしいと言う理由で虐殺はあり得ないと言う選択をとります。

しかし、もし仮にこの集落の住人がゲリラを庇っていたとするならば、更に多くの味方が死ぬかもしれないと言う本当に究極の選択だった様に思います。

バーンズがまぁ比較的悪者の様に映ってはいますが、彼は多くの経験からそう言う結論を導いているのであって、決して頭がおかしくなったわけでは無いと思います。
実際にエリアスは仲間と大麻を吸っている描写があり、バーンズにはその描写がないので、
この戦地でどっちが物事を冷静に判断できているのかと言われれば本当にギリギリだなと思いますし、未だに僕もその状況になればどうなるかわからないです。

ただやはり、戦争が長期化するとPTSD然り、精神的に冷静な判断が付かず、極端な行動に出てしまうのだと感じます。
そう言う意味ではラストにテイラーがバーンズを撃ったことも決して褒められた行為ではないし、彼が冷静であればそれこそ軍法会議にかけるべきだったのだと感じます。
しかし戦況が激化した中、四方から敵の銃撃に合い、また味方からも空爆の中、ラストに見たバーンズの目には光は失われ狂気に塗りつぶされた様に真っ赤になっていたのが非常に印象的である。

また、国に帰るための残りの日数をカウントしているなどは他の戦争作品とは違い、
『この戦いを終わらせるんだ‼︎』や、
『俺たちは正義の戦いをしているんだ‼︎』などの綺麗事を吐く様な人はおらず、
彼らはずっとこの地獄をひたすらに耐え忍んでいるだけなんだなと言う印象でした。

自分の足をナイフで刺し、帰化しようとする者、
死体の下で戦火をやり過ごそうとする者、
構わないからあたり一帯を爆撃しろと命じる者、
自分と意見が違うからと味方を撃つ者、
それこそ様々な種類の異なる考えが戦場に飛び交っては散って行ったのがよくわかる名作でした。

個人的に数ある戦争映画の中でも上位に食い込むのはもちろんですが、
僕の中の歴代一位は『1917』のままですが、
この作品を見れたのは本当に自分にとっていい勉強になりました。

今回はこの辺にします。
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