おと

川の底からこんにちはのおとのレビュー・感想・評価

川の底からこんにちは(2009年製作の映画)
4.2
直接的で映画的表現としては下品ではあったけれど、その分芯の強さを感じた。
垢抜けていないことを自覚しつつも、それを見れるものにしようとするのではなく、それはそれとして恥じることなく描ききるという信念のようなものに感銘を受けた。

今の石井監督作品と比べると、ここまで表現の成長をするものなんだなと感じると同時に、変わらず根っこにある実直さが今作も遺憾無く発揮されており、まぎれもなく石井監督の作品だった。
その作家性に憧れる。

満島ひかりの演技がとても良かった。
上手い下手ではなく、今回は満島ひかりでしか描けない物語だったと思えるほど佐和子として存在しており、人物に強い生命力を感じた。
やはり女優というより役者と呼べる、数少ない人だと思う。

脚本は至って普通といえば普通かもしれないけれど、腸内吸引から畑への肥やしといった細かな暗示が数多くありつつも、そして「居場所」のなさを映像として直接目に訴えかける力強さと合わさってとにかく力のある映画だった。

石井監督の作品は、実直さ、力強さを主軸として主人公の抱えた事象にとことん向き合っていきつつも、サブメッセージとして色々な方面に手を伸ばしていることで物語に厚みを持たせている事が多い。
それと、最近の映画では何故か珍しくなってしまったけれど、笑いの要素も忘れないようにしている。
そういったところが好きなんだなと感じるこの頃。
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