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青春18×2 君へと続く道のおとのレビュー・感想・評価

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)
4.5
ずっと待ち望んでいた本作。
しっかりと期待に応えてくれ、見終わった後に充足感に包まれた。

想像していたよりは、かなりシンプルな作品だった。
過去と現代の交差と、それぞれの時代の人物の顔つきの対比がとても良い。
ただ、全登場人物に共通して少し「クサすぎる」気がした。
学生時代のジミーの浮かれ具合や、アミの思わせぶりな態度や周りの人に振り撒く愛想の良さは、少しばかり不自然に感じた。
それこそ、過去の情景による美化された空間が広がっていて、ジミーの頭の中で繰り広げられている世界。
それはそれで合っているのかもしれないけれど、脳内で思い起こされた空気のような人物ではなく、やはりその時代にリアルに生きた人物としてみんなを描いて欲しかったと思う。
全体的に演出過多だったかも。
幸次や由紀子のジミーに対する肩入れも少し強引だったかな…
尺の都合上難しいところだし、そこに時間を割くのも違うしとてもよく分かるけれど。

清原果耶は個人的に1番好きな女優なんだけど、やはり言葉にしにくい良さがある。
人と言葉を交わしている時ではなく、それ以外の時間の彼女の演技がとても好き。
絵を描いている時や、バイクの後ろに乗っている時、駅で別れた時、涙している時。
その表情や体から出てくる空気感のようなものが、今何を考えているのだろうと想像したくなる不思議な魅力があった。

そしてなんといっても映像の質の高さ…
質感やルックに重厚感があり、でもとても優しい眼差しを感じる。
心動かされたのが人物から出てくる感情からなのか、スクリーンから放たれる空気感からなのか分からなくなるほど良かった。
静寂の中で鳴る音の柔らかさも作品の質感とマッチしていて、世界観に浸れて満足。

超上質な体験でした。
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