「縛り首には自白のチャンスも遺言を書く時間もある。
だが、クリードモア(ライフル)には・・・」(ローガン)
「素晴らしい銃だろう?」(クレイトン)
「当たれば即死だ。見えない相手に撃たれてみろ、お祈りする暇もなくあの世へ直行になっちまう」
「私は使命さえ果たせば手段は問題ではない」
「マーロン・ブランドとジャック・ニコルソンが共演した映画のタイトルはなんだった?・・・」
映画『old』の中で統合失調症を患う医師チャールズがことある毎に尋ねていたのがこの映画です。
マーロン・ブランドとジャック・ニコルソンの二人のアカデミー賞主演男優賞受賞俳優を配した物静かな西部劇です。
対峙する二人の主義の違いが物語を面白くします。
マーロン・ブランドは2度目のアカデミー賞 主演男優賞 を受賞した1972年の「ゴッドファーザー」の4年後52歳、ジャック・ニコルソンはアカデミー賞主演男優賞を初受賞した1975年の「カッコーの巣の上で」の翌年 39歳の作品です。
おそらく以前は善良だった馬泥棒は、普通にまともな牧場主なのですが「ふっ」と、怒りを込めた鋭い目付きを見せます。そんなジャック・ニコルソンの危険な魅力が伝わってきます。
ミズーリ州の牧場主デイヴィッド・ブラクストンは馬泥棒をしたサンディを捕らえ、毎年7%もの馬が盗まれる理由から裁判もせずに吊るし首にしてしまいます。ミズーリ州ではデイヴィッドが法律、裁判のような裁判?で犯罪者の刑を決めるのはデイヴィッドなのです。
馬泥棒のリーダー=トム・ローガン(ジャック・ニコルソン)は、報復のために仲間たちと列車強盗を働き資金を作ると、デイヴィッドとその娘ジェーンに近づき村で牧場をしたいと話しかけて隣の牧場を購入します。
ローガンは直接吊るし首に関わった牧童頭のピート・マーカーを人知れず縛り首の木に吊るしデイヴィッドに脅しをかけます。
ローガン一味の仕業と悟ったデイヴィッドは、遠距離ライフルのクリードモアを愛用する“ワイオミングの整理屋”殺し屋リー・クレイトン(マーロン・ブランド)を雇い、逆襲に転じます。
デイヴィッドにクレイトンを紹介されたローガンはクレイトンの持つクリードモアを見て話し始めます。このときクレイトンはローガンが何者であるか薄々気がつきます。
クレイトンは牛泥棒に失敗して道に迷ったローガンの仲間トッドを川に沈めて殺すとデイヴィッドの屋敷に戻ります。
デイヴィッドは今一つ早さのないクレイトンの仕事にイラつき、ローガンが屋敷に忍び込みクレイトンを狙いに来たことを黙認するのですが、入浴中のクレイトンが丸腰だったことからローガンは威嚇だけで屋敷を後にします。手段を選ばないクレイトンとの違いが後々仲間の命を・・・。
デイヴィッドの娘ジェーンは初めてローガンに声をかけられた時から、真面目を装いながらもどこか危険な香りのするローガンに心を奪われ、たまたま仲間がカナダに馬泥棒に出掛けて一人になっているローガンの牧場を訪ねて関係をせまり、二人は肉体関係になります。
ジェーンを嫁に出すようなことになれば一人きりになってしまうブラクストンは「クレイトンを引き上げて欲しい」というジェーンの願いを無視します。
クレイトンは次々とローガンの仲間を殺していきローガンの屋敷に火を放ちローガンの抹殺を図ります。
ローガンは仕事を終えたと思い込み眠り込むクレイトンの寝首を掻き、クレイトンの愛銃クリードモアを片手にブラクストンを殺しに行きます。
ジェーンに見捨てられたブラクストンは精神に異常をきたしており、ジェーンの説明で「何もできない」と思い込んでしまったローガンだったのですが、いつの間にかブラクストンは銃を握りしめており・・・。
誰一人正義がない映画は意外な人物が生き残り、ニューシネマの片鱗がうかがえます。
「old」を観なければ観なかった映画です。映画ってこういった連鎖が本当に面白い。