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カンフーくんの都部のレビュー・感想・評価

カンフーくん(2007年製作の映画)
1.3
『国家の体制によっては銃殺刑物の脚本』と過去に称された本作は、子供向けなんちゃってカンフー映画の皮を被った狂気的な怪作である。映画としての完成度/カンフー映画を土台としたアクション映画として最低の部類に位置するのは明白だが、胡乱な展開や遣り取りが次々に勃発する奇特な作品としては一見の価値アリ。

ギリギリ笑えるタイプの最低映画なので鑑賞するのはそこまでは苦ではなかったというのが正直な心持ちで、どう考えてもそれはおかしいだろというツッコミどころ満載の本編は好意的に解釈すればまあまあ楽しいとさえ言える。それでも補いきれない脚本上の問題は腐るほどあるが。

そもそも日本語を喋れないカンフーくんと外来語を介さない登場人物達の意思の疎通はほぼ出来ておらず、カンフーくんに向けた回想の語りや台詞の応酬はペットに話し掛けているのとほぼ同じで、それで語り部を中心とした心理的なドラマも何も無いのである。

だからお互いに自己満足で殴り合って、なんとなく上手く納まったから良い感じに終わる話だと。終わるな。

かろうじて意思の疎通を図る為に通訳役を置いているが、それにより一々シーンが間延びしてるのは作品の流れとして大変煩わしい。かような無駄に間延びした不要なシーンが死ぬほどあるのが本作の特徴で、中身スカスカの子供向け映画をなんの間違いか90分尺の映画として公開するための体裁として、取り敢えず差し込まれるそれっぽいシーンが作品の胡乱度を凄い勢いで底上げしていく。この手の不健全な面白さがあるのはやはり事実である。

またカンフー映画を謳う割にカンフーに対してリスペクトなんて欠片もないことが明け透けな描写の数々は百歩譲ってさておくとして、あの終盤の大決戦はじゃあなんなんだと。冒頭のアレ、伏線のつもりか? これを初めとするチープな品質を隠そうともしないCGIの使い方には苦言を呈する他ない。

子供の教育の退廃化という敵役(かたきやく)の野望も話と全然噛み合っておらず、その描写もゲーム脳の安易な批判として適当だし、小学生を演じる矢口真里の役回りの愚かしさ──小学生に身も心も染まってたから学校で起きてるハッキリとした異常に気付かなかったってお前なんなんだよ!──とか、だから本作は大真面目に見る映画では絶対にないのだ。

挙句の果てにカンフー映画であることすら最後には盛大に放棄する無軌道でロックな最低映画という前提を持った上で見れば、笑って楽しめ作品なのではないでしょうか。
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