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ロング・グッドバイのTnTのネタバレレビュー・内容・結末

ロング・グッドバイ(1973年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

 猫の餌を買うために夜中に買い物して、でもいつもの猫缶は無くて別のを持って帰ってくると、なんの気無しに猫はそれを拒否する(この可愛げあるやり取り見て、ずっと見てられる映画だと確信する)。そしてその猫は一度外を出たっきり、帰ってこない。同様に、友人を長々匿った先の結末は、この猫餌買い物シーンに既に象徴されているように思える。

 意思疎通の難についての映画とも言えて、そのせいかみんなむちゃくちゃ喋るし、殆どはそれがかみ合っていないのが面白い(ギャングの裸になる謎理論は一方的で理解できない。逆に包帯男という既に意思疎通が困難な者が授けるハーモニカが、のちに非常に雄弁に語る物となるのも面白い)。そんな中、主人公はあまりに全てに裏切られても、いや主観とはそもそも思い込みでハナから何も通じ合えていなかったのかもしれないが、それでも彼は自身の感情を伝えることを諦めない。猫には餌を、友には銃弾を、女にはハーモニカの音色を。「さよならだげが人生だ」、そんな言葉もあるけれど、それを信じきれない男が最後に辿る「長いお別れ」までの話。

 映画館、おじさん多かったけど、この歳になったら再び来たい。まだ彼らほど真に浸れた感はない。

P.S.
 マーロウにとって唯一ギブアンドテイクな関係は、世界がマッチ箱として火を貸してくれることのみかもしれない。
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