2026年ベルリン映画祭パースペクティブス部門選出作品。Dara Van Dusen長編一作目。先日、アリ・アスター『エディントンんへようこそ』を疫病ウエスタンと例えたが、本当の疫病ウエスタンがやって来た。しかも、公衆衛生などの観念が周知される前の時代が舞台なので、陰謀論で現代医療が剥奪されていく同作より切実な理由で感染が広がっていく。物語は1870年のウィスコンシン州の小さな町で展開される。南北戦争終結から5年が経つも未だに戦争の影に囚われている元兵士ジェイコブは、美しい妻と小さな娘を養いながら、保安官兼牧師兼葬儀屋兼便利屋として、町の隅から隅まで駆けずり回っている。ある日、養蜂家の家の裏にある林の中で若い兵士の死体を発見したジェイコブは、町で唯一の医師の下に運び込む。男は致命的な感染症で亡くなったようで、医師は秘密ロックダウン作戦を敢行し、その現場指揮をジェイコブに丸投げするが感染は広がっていき…云々。公衆衛生が浸透する前の話であると共に、パニックを防ぐために医師が感染症の公表をしなかったせいで、人々は患者と不用意に接触しまくり、次々に死んでいくというあたりまえ体操すぎる地獄絵図が繰り返される。理由は伝えないけど死体には触れるな!→感染シチャッタ…→死体に触れるな!の無限ループである。なんやかんや尊敬されていたジェイコブは、そんな中でも秩序を回復すべく奔走するが、状況は悪化の一途を辿っていく。そこに南北戦争でのトラウマが関わっているっぽく意味ありげに記憶が挿入されるが、上手く絡んでいる気は全くしないし、ロックダウンの失敗について詳細に語る物語を今更作ることで何を伝えたいのかは最後まで判然としない。村の近くにある森では宗教ハーレムコロニーが展開しており、ここでも疫病が広がっているが、ハーレムの中心人物もジェイコブも(つまり神も)それを解決する手段を持たない。結局、村は山火事に襲われて全ての出来事がリセットされるように、この世界から消えていく…暗転…じゃないんだよ!だからなんなんだよ!終映後に前を歩いてた人が"こいつぁひでぇ!!"とブチギレてて爆笑した。