ダルマパワー

ゴッドファーザーのダルマパワーのネタバレレビュー・内容・結末

ゴッドファーザー(1972年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

こんなに短い3時間は、映画至上初めてだったように思う。

本作は、洗練された映像に加えて、登場人物達が格好よく、魅力的に映った。

本当の悪は、他の色の侵食を許さない。黒は磨かれて光輝く。ドン・コルレオーネファミリーの世界は、まさにそんな黒色に見えた。

映像については、どのシーンもスタイリッシュで見映えがした。動的なカメラワークの中でも、構図を変えない緻密な撮影。車がラスベガスのホテルに到着したシーンなどで特にそれを感じた。素人目にもわかる、まったくブレのないきれいなカメラワークだった。その構図も、ひとえに美しい。私自身はまだ構図のなす意味を理解できていないので多くは語れないが、ただ純粋に美しく、ブレがない、だから観ていて気持ちがいい、そんな映像だと感じた。

比較的冒頭で、ルカが部屋で防弾チョッキを羽織り、仕事の準備をするシーンもまた格別だった。

部屋の壁でうまくフレームを作り、奥の部屋にいるルカを強調。その奥から暖かみのある卓上ライトがオレンジ色に部屋を照らし、構図とライティングで、男の命を懸けた仕事、の前の準備を美しく表現していた。後ろで流れる音楽がまた静かで、渋い。無音ではシリアスすぎるこのシーンに敢えてポップテイストが乗ることで、よりリアルなマフィアの仕事前のひとときを日常的に映してくれていた。

もう一つ、構図以外で目についた部分。

ドン・コルレオーネを売ったポーリーを車の後部座席から殺害するシーン。

そのシーンの前のクレメンザとの会話で『バックは子供に気を付けな』や『虫は皆殺しにした』などの会話がでてくる。

少し考えすぎかもしれないが、これがとても暗示的に思えて面白いと思った。本作では節々の会話や行動のなかに、死に対する警告やヒントが含まれているように感じた。クレメンザが、マイケルに料理を教えるシーンも、どこか暴力的な臭いがして、いよいよマイケルがファミリーの仕事に手をだすのかなと思えた。

マイケルについては、始めは愛妻家で、平穏を愛し、堅気にいきる、そんな青年だと解釈していたが、徐々にその才を表に出してくる。冷静な判断は、あまりにクールで恐ろしい。ドンの息子だと節々に感じられた。

最後の妻の質問に、ノーと答えた様子からは、彼が冒頭で仲良くケイと話していた時の優しさ、温かさは消えていて、組織のドンとして、また家族を守る身として、その責任を背中に背負った覚悟が伝わってきた。重たい一言だった。

イタリアンマフィアの深い絆を感じた映画でした。

※AmazonもUNEXTもイタリア語になった途端、字幕が消えてしまい、吹き替えで見直さねばならず、それが残念でした。
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