へちまびと

ゴッドファーザーのへちまびとのレビュー・感想・評価

ゴッドファーザー(1972年製作の映画)
4.2
好きな映画は?と聞かれて、最初に浮かぶ映画のひとつがこれ。

マフィア映画の代名詞のように出るタイトルだが、この作品は所謂マフィア映画ではない。

実際、主たる内容はイタリア系移民であるコルリオーネ家の「俺の家の話」であり、たまたま生業がマフィアだった、と考えて見た方が合点のいく点が多い。
もちろん生業がマフィアだから「仕事」である抗争は重要な話だが、それがストーリーの中心だと思うと話を見誤る。

それは、この映画が家族のイベントである結婚式から始まることでも示唆されている。
映画の重要なシーンは、常にコルリオーネ家の家族の話で構成されている。父の子供たちへの何気ない愛情、妹を気遣う兄の気持ち、家族のために生きることを決意する末っ子……

パート1では家族のありようを描き、2では父と子の対比によってストーリーが進む。やはり家族が軸にある。

一番好きなところは、ビトが果物の屋台を見つけ「子供たちに買って帰ろう」と車を降りて買いに行ってしまうシーンだ。

続けて見ていれば、こんな悠長なことをしていられるほど呑気な状況ではないのが分かる。誰よりもビトが一番それを理解しているが、それでも反射的に買いに行ってしまう。

ビトにとって家族は自分の命より大事で、唯一の弱点である、ということを端的に表現した素晴らしいシークエンスだ。この直後に銃撃されオレンジが路上に散らばるところも美しい。