KenzOasis

ゴッドファーザーのKenzOasisのレビュー・感想・評価

ゴッドファーザー(1972年製作の映画)
4.5
I'm gonna make him an offer he can't refuse.

断れない提案をする。この一文が含んでいるものって凄まじいよな。
ヴィト・コルレオーネの強かさと知性を感じるし、全編を通した含蓄のあるセリフまわしの素晴らしさを象徴するものだ。役者陣の目配せの具合もめっちゃいい。

「ルカが黙っちゃいないぜ」「ルカはこっちで対処しておく」からの「シチリアの挨拶です」。
遠くに自由の女神像があって「小便だ、とめろ」からの銃声を背中越しに聞く。
ソロッツォとの“対談”シーンでの音の使い方。
こういった“画に多層的な意味を持たせる”表現力は真似したくなるな。

最初に観た時は、こんなにも婉曲表現を多用する作品だったんだと驚いたけど、これこそ総合芸術しての映画の見事な完成系だと思う。

ソニーのように短気で直情的で、もっとやばくしたような気狂い漢がいることがマフィア映画のイメージとして強いかもしれないけど、むしろ逆で、そういう奴こそが先に消えていく世界。最終的な手段を実行できる力と術を持ちながら、極めて理性的に事を運ぶ。こんなボスに憧れるのも無理はない……そこに痺れる憧れる……

煌びやかな結婚式にあふれる陽光をよそに、暗い室内では裏社会のやりとりをする。クリスマスという煌びやかな季節の裏で暗躍するマフィアたち。この完璧な陽と陰の対比で物語ははじまり、展開していく。
「家族を大切にできないやつは男じゃない」
この言葉はシリーズを通して忠実に、時に皮肉に効いていて、いつも物悲しい響きを与えてくれる。

映像も美しい美術の中で常に力強くコントラストが効いていて、とにかくカッコよかった(関係ないがこういう写真を普段撮りたい)。

マイケルを通してこの対比が混じり合っていくのがPart1の大いなる魅力だった。
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