Garikuson

カルネのGarikusonのネタバレレビュー・内容・結末

カルネ(1994年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

肉屋を営む冴えないおっさん、彼には言葉を話せない娘が一人。妻は既に家庭を捨てて、二人暮らし。世間に対してモヤモヤと鬱屈した感情を持ちつつ、何も変わらぬ日々をおっさんは過ごしております。変わっていくのは、月日を経る毎に段々大人の女に変わっていく娘の体だけ。
そんなある日、彼の娘に始めての女の子の日がやってきます。しかし、言葉を話せない娘が悲しげな顔でスカートに血を滲ませている姿を見たおっさんは勘違い。何よりも愛する娘になんて事を!とおっさんはナイフを握りしめ…


序盤にデカデカと現れる注意喚起のフレーズ、その後すぐに行われる馬の屠殺、さらにその直後に起こるリアル過ぎるどアップの女性の局部から胎児がドゥルンと産まれるシーン

のっけからえらくトバしてくれるなぁと思いつつ…

しかし、ドキドキもそこまで。40分程の短編映画、ハラハラドキドキのストーリー展開も無く、目ん玉の飛び出るようなゴアシーンも無く、あっと驚くようなどんでん返しがあるわけでもない。淡々と色々と虚しく無気力なおっさんの独白を聞き続け、ダラダラと中途半端に堕落するそのおっさんを眺める映画です。
その点は、正直残念。同監督の「アレックス」みたいなのっけからとんでもねぇ映画と構えてしまっていました。

最後まで見ていられた理由は、カメラの動きと色彩のイヤらしい魅力、不快音のアクセント。

カメラはかなり独特。顔は半端な位置でしかほぼ映さず。でもなぜか引き込まれる。
次に色。赤毛の馬、その馬肉と夥しい血、屠殺場の檻、登場人物の服のワンポイント。要所要所に散りばめられたそれらの少し黒混じりの赤色が、小汚いフランスの黄味掛かった街並みと鈍色の空に不気味な程よく映える。
最後に音。シーンが変わる時に時折響く銃声、皿をナイフで引っ掻く音、古いブラウン管から聞こえるホラー映画のチープなSE、ラジオから響く音割れしたラブソング…

揺さぶられる程ではない、けれども揺蕩う様な不安感にソワソワしてしまい、妙にそれが心地よい。

酒飲みながらボヤーっと見ていましたが、まぁ、ちょうどいい映画でした。

続編の「カノン」も見てみようかしら…
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