
東京のとある住宅の暗室で一枚の写真が静かに浮かび上がる。 その写真は1964年のあの日の韓国、激動の歴史のただ中へと私たちを導く。 水俣病の記録で知られる報道写真家・桑原史成は、27歳で初めて韓国を訪れて以来、60年にわたり清渓川、米軍基地周辺のキャンプタウン、ベトナム戦争への派兵、民主化運動の爆発的な拡大など、激動の韓国現代史を、人生をかけて撮り続けてきた。 そこには血と汗と涙で染まった韓国人の熾烈で壮大なドラマが写り、刻まれている。 時には罵声を浴び、そして入国を拒まれてもなお、彼が韓国の地でシャッターを切り続けてきた理由は何だったのか。そして、韓国での出会いから日本に移り住み、ずっと寄り添ってきた妻・和子の史成への想いも交差する。 高齢となった今、これが最後になるかもしれない旅へと向かい、写真にある「顔」を訪ねる。 水俣、ソウル、ハノイ、平壌などでこれまで撮影された約100万カットの中から厳選された力強い写真の数々とその生き様を通して、写真とは何か、記録とは誰のためにあるのかを静かに問いかけるドキュメンタリーが誕生した。 我々は歴史の生き証人と、同じ視線に立つ。