くりふ

ルパン三世 カリオストロの城のくりふのレビュー・感想・評価

4.0
【セルロイドのたからもの】

劇場では初体験です。

今では滅多に見なくなった、モーションピクチャー(motion picture)…動く絵画としての原初的な楽しさと、ただただ元気だった頃の宮崎キャラの溜め→弾け、を懐かしく堪能しました。

テーマやメッセージなどは二の次で、まずはキャラが動いて物語が転がる活動写真感がキモチよい。

全体のトーンからだと例えば、城の天辺からの「コナン走り」で物語をびよ~んと進めてしまうのはやり過ぎかと思うのです(笑)。でも、そっちの方が面白いからそっち優先!というね。あくまでアクション起点で話がつながってゆくのが本作の肝。その分、物語の背骨は細く感じますが、それが欠点とも感じない。

とはいえ、ジェットコースター・ムービーではないんですよね。動より静が意外と多くて落ち着いた仕上がり。そこが映画としての噛みしめ甲斐でもありますが、かつて宮崎さんが「当時制約があって諦めたことがある」と、インタビューで答えていたことも関係あるのかな?

映画としてのゴールは、アルムおんじ…じゃなかった庭師が「なんてさわやかな連中だろう!」と言う通りのルパンたちを見せることだったのでしょうけれど、そこには違和感あり。そういう類の話じゃないと思った。そもそも、窃盗業者を爽やかと言っちゃまずいだろ(笑)。

今回みた人物の中では、銭型のとっつぁんが一番よかった。こんなに立体的だったかと感心。他の人物はどこか嘘くさいけれど、銭型は実際にいてもおかしくない。実写化できるって意味ではなく。

クラリスに感じるのは、無理に箱入り娘化したような窮屈さ。捏造気味の無垢にむずむず。宮崎さんが一人の男としての欲望を、表面ルパン、裏面伯爵に分け彼女に迫っている気がして素直に面白かったけれど。

逆に不二子ちゃんは割を食ったようで気の毒でした。彼女絶対、クラリスにぶつけたい本音を隠していると思う(笑)。

…それにしても、自分の国がああなっちゃったクラリスは、自分を変えざるを得ないでしょうね。

大画面でみていたら、クラリスが指輪をし忘れているカットに気づきました(笑)。あと、次元があごひげにタバコ落したまま気づかないネタは大きく見るとより可笑しい。

改めて思ったのは、懐かしく大切にとっておく作品だなあということ。この面白さは、今の技術ではもう再現できないと思う。映画も時代につれ変わっていくのだから、それが寂しいことだとは思いませんが。

…実写版ルパンの予告編はやめてほしかったなあ。本作の前に流すのは逆効果だと思うぞ。

<2014.6.6記>
くりふ

くりふ