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内なる傷痕のfilmoutのレビュー・感想・評価

内なる傷痕(1970年製作の映画)
3.9
フィリップ・ガレルにしても割と初期の作品でもうほとんどニコのPVみたいな感じだが、終わってみると意外とダイレクトに受け取るものがあったなあという印象。

かなりミニマルなロケーションの中、人物を点と点として描きながらも表現されるものは観念的な心象風景なのでいわゆる表現主義とも捉えられる。
序盤はニコの現実を思わせるような激情的なやりとりから始まるが徐々に内省的な印象にスライドしていく。
外界というより自己にベクトルが向いていて、ニコは冒頭で息ができないほどしんどいのに内省の旅によってラストに向けて自己の肯定が結実していく。
最悪に絶望でキツイのに思考や感情が渦巻いて落ち込むのだが最終的にはなぜか前向きになっている、というのはよくあることで乱暴に言ってしまえば単純にバカっぽい。それがいい。

ガレル自身がその頃そういう性格だったのかもしれないが、全くもってニコらしいというか。
ヴェルヴェッツとしてのニコよりはやはりソロで出したThe Marble Indexから本作のシーンがジャケットに使われているDesertshoreの雰囲気というニコとしても最高の時期。
こういう内省的な表現は自分もほとんど同じなのでこんな作品こそ共感してしまう。

セットで『ニコ・イコン』も見ると尚良し。
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