
電話の音が、がらんどうの部屋に鳴り響く。吃音症の主人公・信人(23)が受話器を取ると、聞こえてきたのは過去の自分の言えなかった声だった。14年前、信人(9)が帰宅すると、リビングで母が倒れているのを見つける。母は病に罹っていた。幼い信人は咄嗟に119番通報するも、助けを求める声が出ず、母を救うことができなかった。電話ごしに聞こえた過去の自分の「助けて」という声は、声に対する恐怖と母との記憶を呼び起こす。言えなかった声。聞こえない声。失われた声。それぞれの声を行き来しながら、境目が曖昧になった過去と現在を彷徨い続ける。そして、その彷徨いは人生への答えを探す問いへと変容していく。
(C)東京藝術大学大学院映像研究科