垂直落下式サミング

丹波哲郎の大霊界 死んだらどうなるの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.4
「人は死んだらどうなるのか?」という疑問に対して、丹波ファミリー総出演で答えを出してくれるアドベンチャー映画。大学に入ったときに宗教勧誘で無理矢理見せられたビデオ映画のような内容で、死んだ人達と共に死後の世界を体験していくオカルテイックなストーリー。
本作で丹波哲郎が提唱する宗教観は非常によい考え方だと思う。あの世は素晴らしい世界で、そこで来世に転生するためにも、生者は魂の修行期間である現世を誠実に生きなければならないと霊魂を肯定することで、天に与えられた生命を全うすることの尊さを前向きに説いている。仏教的でもあり西洋哲学的でもある独特な生死観を持つ心霊主義。地球大統領丹波哲郎大先生による真面目なナレーションとともに描かれる死後の世界旅行は、心霊についての論理的な検証ですらある。
私は特に信心深くは無い人間だが、死んだら天国なり地獄なり…所謂“あの世”なるものがあると思うようにしている。「死んだら無になる」という考え方より「死後の世界に行く」と信じていた方が実際は幾らか楽だ。人が最も恐れるのは行き先が見えないものであって、自分がこの先どうなるのか、何処へ行くのかわからないから、人は不安や孤独、絶望に苛まれ生きることが辛くなる。
信仰心によって死後の魂が行く場所にある程度の目星がたてられるなら、少なくとも生きている間は余計な心配をせずに済むし、死ぬ時も幾らか楽なはずだ。私としても、自分の罪も不幸も半分くらいは神様仏様のせいにして都合好く楽観的に生きていくために、ある程度の信仰心や心霊に対する畏怖というものは大事にしていきたい。この映画を見終わったらそんな思いが強まった。
「生」は「死」まで続く勉強である。だからこそ生きなければならない。大切なのは死から目をそらさないこと。オリエンタルなオカルト思想として非常に上手い落とし所だと思う。
魂の救済とは何か?心霊信仰の意義とは何か?
そんな深いところまで考えの至る良い作品だった。