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戦争のはらわたのGTのネタバレレビュー・内容・結末

戦争のはらわた(1977年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

独ソ戦がテーマになっている映画。
ペキンパーの映画を初めて観たのだが、終始カットがコロコロと変わりスタイリッシュではあるが若干目が疲れる。あれはペキンパー特有の物?とはいえ、ど迫力の戦闘シーンや戦争の狂気の表現にはもってこいの手法ではある。独特といえば、オープニングもかなり独特。童謡(?)が流れる中実際の戦争映像が目まぐるしく映り変わるというもので、些か不気味な雰囲気も感じる。
鉄十字勲章を欲しがるシュトランスキー大尉と軍隊上層部を憎むシュタイナー伍長の軋轢、及びシュトランスキー大尉に疎まれ敵軍の真っ只中に放置されたシュタイナー部隊の脱出劇を主に描く。名誉と保身の事しか考えないシュトランスキーに比較して人情味溢れるシュタイナーという構図は如何にも戦争モノではありがちだが、ロシア軍の女にフェラをさせようとしたらチンコをちぎり取られた兵士を女たちの生贄にしたりと、上官らしい冷徹な面も持っており、この辺戦争故の厳しさを感じる。
私自身確かに迫力すごいけど、そんなにいいかあ?と思いながら正直鑑賞していた。だがこの映画がすごいのはラストだ。シュタイナーは最終的には生き残り、部隊に合流しようとする。しかし部隊は彼らに向けて発砲。命令をしたシュトランスキーの手下の中尉は「俺は関係ねえ!」の一点張り。キレたシュタイナーが中尉を発砲して殺す。「借りを返す」。この言葉からして、シュタイナーがシュトランスキーをスカッとぶっ殺して終わりかと思いきや、「あんたが俺の小隊だ」。まさかの共闘。シュトランスキーは銃の使い方すら知らないようで「装填のやり方が分からん」!それを見て大爆笑するシュタイナーで終了するという何ともぶつ切りというか滅茶苦茶変な終わり方だ。オープニングで流れた童謡がここでリヴァイヴァルされ、エンドクレジットではシュタイナーの哄笑が時折流れ続ける。諧謔的、若しくは冷笑的な雰囲気すら感じさせる。クレジットの最後には「諸君、あの男の敗北を喜ぶな。世界は立ち上がり奴を阻止した。だが奴を生んだメス犬がまた発情している。」というベルトルト・ブレヒトの言葉が引用される。シュタイナーが「笑って」いるのは、あったかい部屋ぬくぬくと戦争モノ映画を見て「笑って」いる、私たちのことなのかもしれない。
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