がちゃん

戦争のはらわたのがちゃんのレビュー・感想・評価

戦争のはらわた(1977年製作の映画)
3.6
敗色濃厚となった第二次世界大戦下、ジェームス・コバーン率いるドイツ小隊の潰走を背景にして、歪んだミリタリズムとヒロイズムに痛烈な皮肉を浴びせた、サム・ペキンパー監督の力作。

童謡の流れる中、細かいカットの複雑な編集で白兵戦が繰り返される冒頭から、ペキンパー監督お得意のスローモーション撮影が効果をあげて迫力のあるシーンが連続する。

巨匠然とした重厚な演出は、その戦闘場面で冴えわたるのだが、貴族出身で勲章を得る名誉欲にまみれた上官と、軍人として戦うことの名誉を重んじるジェームス・コバーンとの対立を描く図式は、すでにキューブリック監督の『突撃』(1957)やオルドリッチ監督の『攻撃』(1956)が発表された後では、どうしても「またか」という風に感じてしまう。
残念ながらペキンパー監督では、両監督より演出力で劣る。

戦闘中に負傷して病院に送られたコバーンが、献身的に看護してくれる看護婦(師)と恋に落ち、さらに入院中に戦場でのことがフラッシュバックするところなどはとても観念的になる。
作品に深みを持たせようとしているようだが、どうも本作のテーマをぼやけさせる結果になったようで、効果が出たとは考えずらい。

ソ連兵に化けたりしながら敵中突破しようとする冒険活劇のような件も、そのものものしさほど緊迫感が盛り上がらないのも残念。

上官にとって邪魔な存在となってしまったコバーンが、陰謀により消されそうになるところ、危機一髪で生き延びて、上官に銃を向けるのだが、あえて生かしたまま共に前線に繰り出して、実戦経験のない上官をあざ笑うラストも、視線はシニカルなのだが定石的だ。

力作であることに疑いの余地はないのですが、出来栄えという意味では、少し残念。
133分の尺は長すぎた。

ソ連の女性兵士たちの潜む小屋へ、コバーンたちが潜入する場面で、男性にとっては非常に痛く感じる場面があります。
この場面が一番強烈だったかも・・・
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